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interview
大阪労働局労働基準部安全課 田嶋康男課長  【平成22年6月28日掲載】

「みんなで進めようリスクアセスメント めざそう職場の安全・安心」

災害防止三本柱で推進

リスクアセスメント まず実施すること 


第83回全国安全週間が、今年も7月1日から7日まで「みんなで進めようリスクアセスメント めざそう職場の安全・安心」をスローガンに展開される。昭和3年(1928年)に開催されて以来、「人命尊重」の基本理念の下、一度の中断もなく続けられている。大阪府における昨年の建設業の死亡者数は20人と過去最少となったが、業種別では依然としてトップであり、また全産業での死亡者数72人は全国ワーストワンとなった。このため、大阪労働局では、ワーストワン返上を目指して、建設業労働災害防止協会大阪府支部など関係団体と連携して「大阪危険ゼロ先取運動」を今年も推進することとしている。その活動の中心となる大阪労働局労働基準部安全課の田嶋康男課長に、重点項目や目標、課題などを聞いた。

■まずは昨年における大阪府内の労働災害の発生状況からお聞かせ下さい。

田嶋課長

昨年の死傷災害は8,529人と前年の9,677人に比べ大幅に減少しております。業種別の全体では約12%減で、このうち建設業は1,193件から945件と約20.8%の減となり、死傷災害が大きく減ったことに喜んでおります。死亡災害につきましては全体で1人増えて72人となりましたが、当局では従来、100人前後で推移しており72人という数字は過去の災害が見れば非常に少なく、昨年と前年は過去最小レベルで、関係者の努力の成果と見ております。

■とはいえ、業種別では建設業は依然としてトップを占めております。

田嶋課長

建設業の死亡者数は昨年20人で前年より8人減っておりますが、これは建設業では過去最少となりました。これまでは平成16年の21人が最少でした。死亡災害防止については、建災防大阪府支部をはじめとする関係団体が常に過去最小を目指して、非常に熱心な取り組みを展開されており、ある意味その熱意が実を結んだとも言えますね。

■労働災害発生率を見ておりますと、上げ下げの幅が激しい部分がありますがその原因は。

田嶋課長

経済状況によって工事量も増減しますし、工事が増えれば事故も多く起こります。平成19年から20年にかけての減少は、リーマンショックによる影響もあるとは思いますが、工事量の減少以上に災害が減ってきているということは、やはり現場における地道な努力の成果で経済の影響以上に事故も減少しており、これは評価に値するものと思います。

■今年の状況については。

田嶋課長

5月末時点での統計ですが、建設業では昨年同期と比べ死傷者数で51人減の18%の減少で、今年も大きく減少しております。死亡災害も前年同期より1人減った4人でいずれも減少傾向にあると言え、この状況を維持していきたいと思っております。

■ところで、全国の労働災害発生状況と比べて大阪の状況は。

田嶋課長

先程言いましたが死亡災害数で72人は、前年トップであった北海道や工事量の多い東京を抜いて、残念ながら昨年は全国ワーストワンです。ただ建設業自体で大阪府は、北海道、神奈川県、兵庫県に次ぐものであり、全国的にも建設業の死亡災害は減少しております。このため、大阪労働局としても死亡災害の減少によるワーストワン返上を目指します。

■その大阪労働局の今年の取り組み方針について。

田嶋課長

昨年の災害発生状況を踏まえた上で事故の型別を見た場合、建設業は墜落・転落災害が最も多く死亡災害にも結びつきやすいため、今年は大阪危険ゼロ先取運動で 「墜落・転落災害」「交通労働災害」「感電災害」の防止と「熱中症」予防の四つの重点項目を定め、それぞれに強調期間を設けて1年を通した形で周知徹底を図っていきます。 これに加え、昨年からの重篤災害対策とリスクアセスメントの普及促進の三本柱で推進していきます。

■リスクアセスメントに関しては形式的なもので終わっている場合もあると聞き及んでおりますが。

田嶋課長

ええ、確かにそういったこともあるかも知れません。建設現場ではKY活動と一体的に実施されている事業所もあるでしょうが、まずは実施していただくことが 重要で、馴れた活動と一体となって実施することで受け入れやすくなると考えております。KYでリスクを見つけ出し、そのリスクを評価して改善につなげること、 まずはできるころから実施してほしいと思っています。

■建災防大阪府支部をはじめとする団体、各企業の安全への取り組みも進化してきている。

田嶋課長

そうですね。毎年、いろんな手法を取り入れるなど工夫、努力はされておられます。建災防大阪府支部では、期間限定的な取り組みであった「ご安全に運動」を、 年間を通した取り組みとするなど、様々な状況を踏まえた取り組みをなされておりますね。しかしながら、最後は「人」につきると思います。ルールを守り、 基本的な手順を守ること。手順を守らず、事故にならずに済んだことがあっても、それに慣れて繰り返すことで事故は起こります。

■そうですね

田嶋課長

現場では、基本の安全対策を守るということですね。また、私自身の経験からは、絶えず注意する所長の居る現場はきちっりしており、事故が起こりにくいです。 やはり責任ある立場の人が自ら行動し、範を示すことが重要だと思いますね。

■本当にそうだと思います。これからも災害防止にご尽力下さい。       (渡辺真也)

田島康男(たじま・やすお)昭和51年4月労働基準監督官任官、平成17年4月和歌山局御坊署長、平成19 年4月大阪局労働基準部統括特別司法監督官、平成21年4月から現職(安全課長)


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