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対談 建設業界 迫られる担い手確保 技能労働者 活躍への道 【平成30年07月30日掲載】
 
建設業界 迫られる担い手確保 技能労働者 活躍への道

近畿地方整備局企画部   井上智夫部長
建設産業専門団体近畿地区連合会   北浦 年一 会長


北浦会長 井上部長



 建設業における働き方改革と生産性向上の取組みに向け、国土交通省では、週休2日の実現やICT施工の拡大など様々な施策を打ち出しているが、その根底にあるのが担い手の確保と育成で、特に技能労働者の処遇改善が大きな課題となっている。これらの課題について、近畿の建設行政を先導する近畿地方整備局企画部の井上智夫部長と建設産業専門団体近畿地区連合会の北浦年一会長に、社会保険加入対策や技能者評価のあり方について語ってもらった。

働き方改革 週休2日を推進   井上部長

処遇改善は民間工事が課題  北浦会長

■初めに、近畿地方整備局が取り組む政策からお聞かせ下さい。

井上

 国土交通省では、働き方改革と生産性向上の2本柱で建設政策を進めています。働き方改革の1丁目1番地は週休2日工事の推進で、これは現在の建設労働者はもとより、今後、入職してくる若年層にとっても必要になっています。現在の若者は休暇を重視しており、建設業だけが取り残されてしまうと良い人材が入ってこなくなるという意識の中で、業界全体の協力を得て週休2日工事を推進していきます。
 もう一つはICTの導入による生産性向上で、i―Constructionの施策の下で進めており、直轄事業はじめ大規模工事ではある程度の成果が出始めておりますが、中小規模工事については生産性向上の効率が上がらないと指摘されており、これに対して、積算や歩掛も含めてどういった体制ができるかを考えていかなければなりません。
 さらに働き方改革と生産性向上の両方に関わる政策として、全国で300万人を超える技能労働者の方々に活躍してもらうため、それらの方々の立場に立った施策を進めていきたいと考えています。

■専門工事業の立場から見た働き方改革について。

北浦

 技能労働者の処遇改善については、20年ほど前から訴えてきておりますが、ようやく始まった感はあり、これからはスピードを上げて取組みを進めてもらいたい。社会保険加入については公共工事で先進的な取組みが行われておりますが、基本は処遇改善であり、社会保険はその一つで、処遇改善が実現すれば社会保険や建設キャリアアップシステム等の普及も早まると考えています。
 では、その処遇が改善できないのは何故か。設計労務単価が上がっても末端の作業員にまで浸透していない現状を認識して頂きたい。社会保険でも、日建連に加盟する大手5社をはじめとする準大手のゼネコンでは取組みを進めているが、残りの元請ゼネコンが続かない状況にある。これは行政の指導が届かない民間工事が多いことがその要因にあると思っている。
 ただ、週休2日に関しては賛成です。私のところに相談に来る業者に聞いても30歳以下の職人は休みを欲しがるが、40歳を超えると賃金が大事となる。社会保険にしても、週休2日にしても将来のことを考えると必要であり、建設キャリアアップシステムが普及すればある程度は解決できると思っている。生産性向上もしかりで全ての要素が含まれており、また、賃金だけでなく退職金も含めた福利厚生も考えていかなければならない。

■週休2日の場合、手取りが減るとして反対する職人さんもおり、実現にあたっては、やはり民間工事がネックになってくる。

北浦

 日給月給の職人や月給制の職人など、業種や体制によっていろんな職人がいるわけで、その辺はこれから解決しなければならない問題でもある。個人的には、職人は請負でやるのが基本だと思っているが、土木の場合は請負でやっているが、建築については職種によって請負業から離れている。
 週休2日も社会保険も結局、全ての負担が職人に向かっている。親方は元請に対しては弱い立場にあり、単価にしても元請の意向に従わざるを得ず、そのツケは職人に廻る。また、行政が新しい制度や施策を打ち出しても、それらに伴うコスト等を支給できる業者は少なく、殆どの場合、職人が負担することになる。現状では、社会保険未加入で単価が安い業者が受注面で有利な状況にある。良い職人を抱えている業者が受注できるようにしないと週休2日等の処遇改善は進みにくい。

■現在の技能労働者の状況はいかがです。

井上

 人材については近畿の場合、今はそんなに不足感はないようですが、年齢構成でみた場合、50歳以上の方が大半で、10年後を考えれば急速に技能労働者の数が減少します。それに加え、若年者の入職が進まなければ人手不足に直面することになります。そうなると我々が進めている公共事業を支えてくれる人がいなくなり、設計労務単価を上げるだけでは対応しきれず、今から人材を育成していかなければなりません。
 公共事業の土木と建築の割合では土木事業が多くなっていますが、では民間建築をやっている人が、直ぐに公共土木で働けるかといえば、必ずしもそうではありません。その辺りでの人材の流動性は限られており、それらも考慮して今から若手や中堅クラスの技能労働者の育成を考えていかなければなりません。
 その第一弾が、設計労務単価の引き上げで、6年連続して取り組んできました。北浦会長が言われたように、政策の方向性としては間違っていないとは思いますが、元請に支払ったものが、一次下請から二次下請へ、さらに専門工事業者の技能労働者までにきっちりと行き渡っているかどうかについては問題視しています。

■なるほど。

井上

 昨年国交省で調査した結果、賃金と設計労務単価の乖離の観点でみると下請次数が増えるほど適正賃金が支払われていない実態が明らかになっています。政策は間違ってはおりませんが、それを浸透させ、徹底していくことがこれからの大きな課題だと思っています。
 また、その場合、発注者だけでなく、元請から下請までの工事を請け負っている方々にどのように協力してもらえるかが一つのポイントになります。さらに、先程も指摘があったように、建築分野では民間建築が大きな割合を占めており、公共土木の発注者だけでなく、民間工事も実施している公益企業や民間発注者の方々にも賛同してもらえるよう働きかけていかなければなりません。

工事平準化をリード     井上部長

現場従事技能者評価型に感謝  北浦会長

■次に人材確保に関する取組みを。

井上

 政策でかなりリードしていける部分があると考えており、まずは公共土木の発注行政として推進していくことで、建設業界全体をその方向へ先導していくことを目指していきます。また、設計労務単価だけでなく工事の平準化も考えなければなりません。日給月給制の技能労働者は流動性がありますが、月給制に移行するのであれば、年間を通してある程度一定の受注量が必要です。
 これまでのように前半に受注量が落ち込み、後半に増えていくような偏在化した状況でなく、年間を通じて平準化するような取組みをしなければいけません。これには、公共事業の中でリードしていくことが必要です。そうしないと掛け声だけで週休2日をお願いしますと言っても、仕事がなければ無理なわけで、そこに取り組んでいくことがまずは重要ではないかと考えています。

北浦

 職人を育てるには仕事がなければできない。優秀な職人でも仕事がなければ辞めていく。仕事が継続することが前提になる。土木の話が出ましたが、土間打ちコンクリート工、土工が不足している。とび工や型枠工に比べ土工は、もともと賃金が低いためなり手がなかった。通勤経費等は同じように掛かるが、能力給は別として基本給が安い。土木工事においてはコンクリート工事が大事であるにも関わらず、土工不足が顕著になってきている。
 土工は、ある程度技能が必要だが、専門工事の親方もないがしろにしてきた部分はある。技術のある土工とそうでない土工は本来、分けて評価するべきだが、それをしない。腕の良い職人を配置すればするだけ親方は儲からない。実際、出面精算では良い職人を連れて行った現場は殆ど赤字だと言われているが、賃金の安い土工を入れれば利ザヤが違ってくる。二次以下の下請は、そうやって成り立っている。
 一方、国の方針もまだまだ浸透していない。例えば、繁忙期には、現場所長から下請に対して「とにかく人を集めてこい」と指示が飛ぶケースもある。当然、このような現場では動員力のある下請が高く評価される。さらに中には、「保険未加入でも構わないから連れてこい」という切羽詰まった現場まである。実際のところ、この辺りを改善しない限り前には進まない。是非とも、大手ゼネコンには範を示していただきたい。あわせて国にも協力をお願いしたい。

井上

 現在、職人が充足している近畿において、ゼネコンが下請を叩いている状況ならば実質賃金が上がらない。そうなると実態調査した我々の設計労務単価も上がらないという循環が悪くなります。オリンピック・パラリンピックや震災復興といっても、旅費や宿泊費を考えると、全体的にはそれほど流動性はない。やはり大阪の人は大阪の仕事をやりたいはずで、まずは発注行政として必要な事業費を確保し、オリンピック・パラリンピック以後の関西をどうするのかを考えて関西の事業を増やすような取組みをまず、考えていかなければならないのではないかと考えています。

北浦

 やはり親方の仕事は職人に仕事を与えること。仕事がないのが一番つらい。仕事がなければ親方が自腹を切ることになり、私自身も仕事がない時に一番悩んだ。今の親方は職人がいないことで悩んでいるが、私からするとこれはちょっとおかしい。繰り返すようだが、本来、親方の役目は職人に仕事を与え、育てることだ。そういった意味では、親方の仕事が分かっていない者も多い。

■技能工の育成に関し、近畿地整では今年度から現場従事技能者評価型を試行導入されます。

井上

 現場で働く技能労働者を評価するもので、今年度から一部の総合評価方式で試行します。この方式をC・Dランクの発注工事で取り入れていきたいと考えています。既に北浦会長は、大阪府に対して申し入れを行っておられますが、我々としても発注者協議会を通じて強く要望していきます。その成果として、良い技能労働者が携わった工事に関しては、高品質で安全に生産性の高い工事が実現するものと期待しています。良いものを作るには、良い技能労働者が必要であることを見せていくことで、働き方改革につなげることができると考えています。
 試行にあたっては、中途半端にやっても効果が見えないだろうと、思い切って配点を高くしました。全ての工事が対象というわけにはいきませんが、優秀な技能労働者を配置してもらえれば、加点が伸びるという前提で、これには北浦会長はじめ建専連からの要望も反映したと思っています。

北浦

 そこについては感謝申し上げる。建専連内部でも反響は大きく、特に四国や中国、九州地区の西日本でも驚いています。また、資格を持った職人の意欲を向上させることにもなる。このため各専門工事業者に対しては資格取得を促している。社会保険と同様に、すぐに成果は得られないが、国が実施することに大きな意義がある。

井上

 今回の取組みには、専門工事業者はもとより元請が意識してもらうことにも意味があります。受注にあたっては、腕の良い技能労働者と一緒に仕事をしないといけないということを分かっていただきたい。また、建専連に対しては、そうやって優秀な技能労働者が評価されることにより、若い人がそんな先輩を見て、自分も先輩のようになりたいと思っていただき、これから建設業を目指す人達もそう思うような雰囲気を作っていただきたい。

技能者評価始まったばかり   井上部長

キャリアアップ有用な制度    北浦会長

■これまで技能者を評価する視点での発注方式はありましたか。

井上

 ないわけではありませんが、これほど明確に打ち出した方式はありませんでした。技能労働者の年齢構成を考えると、10年後や20年後には担い手がいなくなってしまう。そうなってからでは、手の打ちようもなく、今からやっておかないと間に合わなくなり、今でも遅すぎると思っています。そういった意味から、建設業界を支える全体像をみた上で、施策展開を図っているのが最近の状況です。

北浦

 国が職人に焦点を合わせ始めたのが20年程前からで、社会保険でも取組みを開始して6年が経過した。はっきりと言ってしんどいなという状況です。国もいろんな施策を進めおり、今回の取組みも始まったばかりで結果が出てくるのはまだ先の話で、結果次第ではどうなるかも分からない。

井上

 確かに、政策が浸透するには数年、場合によっては10年以上かかるものもあります。技能者評価については始まったばかりですが、今年の試行の中でよい成果が出れば、次にステップアップしていけます。

北浦

 その考えについては、現在実施しているコンクリート構造物品質コンテストにも当てはめてもらいたい。コンテストについては、職人を持った専門工事業者が手掛けることのできる2億円程度の規模の工事を対象にしてほしいと、当時の局長にお願いしました。つまり本来は、高品質の構造物を作った元請は、腕の良い職人を持った専門工事業者を使っていると評価し、その職人を表彰することが狙いだった。
 ただ、そういった制度があるからには、それを活かすことも必要だ。専門工事でも元請になれる独立性の強い業種があり、どうやったら工事に食い込んでいけるかを考えて、発注者に対して要望だけでなく、こちらから提案することも重要だろう。これについては勉強会を開こうと思っている。

井上

 技能労働者に対して、現場ではどういった評価すればいいのか。技能者の仕事を元請が評価し、それが発注者が見た評価になるといった体系をつくる必要があり、それも工事が終わってからではなく、工事中にどの辺りを見てもらいたいのかを我々も勉強する必要があります。

北浦

 職人を持たず、資機材も持たない業者は論外で、資格を持った職人がおり、保険にも入っているような業者をモデルケースにして検討してほしい。最近は、技能資格に対する職人の関心が高まってきている。資格がなければ賃金に差が出てきたことからで、振興基金でも資格取得を支援しており、その面でも資格者を評価すべきだ。

■やはり品質面も重視される。

井上

 品質は、通常は信頼に基づくものとして認識しており、むしろ安全面での効果を期待します。良い技能者の中に若い未熟な技能者が混じって失敗しても現場のOJTで安全にやっていける。そうった体制をきっちり見ていく必要はあります。
 ただ難しいのは、発注者が賃金の流れをどこまで見ていけるか。元請に対しては我々も話はできますが、それから先の一次下請から二次下請、さらに技能者まで行く過程を、我々が追跡していくことが本当に良いのかどうか。勿論、関心は持っていますが、調査をして不備を指摘するような体制より、元請から下請、末端の作業員までがちゃんと賃金受け取っていると明言できる請負体制を適正に評価することの方が良いのではないかと思っています。

■建設キャリアアップシステムについて。

北浦

 これは良い制度だと思っている。ただ、専門工事業者の意向をどこまで反映してくれるのかと。そういった懸念はある。しかし、きちんとした制度になれば生産性も向上し、ひいてはゼネコンにとっても有用なものになる。

井上

 2つの面があると思っています。一つは技能労働者の活躍の場を広げていくことで、そのための武器になります。もう一つは、技能労働者の引き抜きを助長するのではないかという懸念があります。このため情報の扱いなどの運用をきちんとしなければなりません。システム自体は良いものだと思っています。

北浦

 これまで職人が足らなくなると機械化やPC化が進んできた。今ではロボット化への取組みも始まった。しかし、そうなってもそれを使いこなせるような職人になることで時代に対応しなければならない。
 職人を育てるには時間はかかるが、努力すれば一定のレベルまでには到達できる。あとは信頼の問題で、職人が親方を信頼し、ついて行くことができるかどうかだけ。ただ、そこが一番難しい部分でもある。さらに腕の良い職人と一般の技能労働者を区別する必要もある。そこをごっちゃにするから、腕の良い職人が損をする羽目になっている。法律を守る正直者が馬鹿を見ることがないように、そこを行政がしっかりと評価してほしい。

親方が推薦する職人表彰制度に  北浦会長

メンテナンス対応の企業体力を   井上部長

■専門工事の企業評価についての考えを。

井上

 職人さんに焦点をあてるべきでしょう。それら職人さんで専門工事企業は成り立っているわけですが、発注者が直接、専門工事業者を評価するわけでありません。しかし、職人さんが働くそれぞれの現場でどういった成果を出してくるかを見たい。

北浦

 かつて親方は、誰のお陰で仕事ができるのかと職人に言っていたが、今は職人がいないと親方も仕事が出来ない。私自身、そういう気持ちに変わってきた。職人が良くならないと親方も良くならない。そう意識を変えなければいけない。そういった意味で職人に焦点を当ててほしい。
 これまでも国は、いろんな施策を行っていますが、目に見えて成果がでない状況にあると思っている。特に民間工事の場合、元請は発注者に対してどうしても立場が弱くなる。お金だけなく、少々無理な工期であっても対応せざるを得ない。発注者が示す工期ではできないと言えば、それじゃあ別の業者に発注すると言われてしまう。結局、やるしかない。民間工事に関しては行政も口出しできないことは分かるが、例えば、工期設定については建築確認申請で厳密にチェックすることも考えてもらいたい。

井上

 民間工事でも、マンションなら住民のことを考えたり、工場やオフィスでもそこで働く人や周辺のことを考えることは必要です。エンドユーザーは国民であり、そこを施主がどう考えているのか、あるいはどのように考えを変えて行けるか。
 ただ、公共工事も改革が道半ばであり、良いところがあれば逆に悪い部分もあるので、それを見ていかなければならない。民間の施主もしかりです。 工期の設定でも、現在では支援システムにより進めていますが、これを標準工期とすれば、ゼネコンも施主に言いやすくなるかもしれない。勿論、自治体や公益民間企業にも広めていき、少しずつ仲間を増やしていきたいと思っています。

■着実に進めていくということですね。

北浦

 今、大阪では万博やIR誘致を進めているが、万博が決まりIRが決まっても工事ができるかどうか。確かに建設業者はいるが職人がいない。そのためには継続した仕事が必要で、仕事がなくなれば職人が逃げてしまう。

井上

 今は過渡期で、日給月給で働く職人さんでも給料を重視するベテランと休みを重視する若い人が混成状態にありますが、やはり将来的なことを重視して考える必要があり、ベテランの職人さん達には苦労をかけるかもしれません。

北浦

 休日や社会保険、退職金も考慮しなければいけないだろう。それと月給制にしても請負と比べて安いとのイメージがある。私の考えでは、登録基幹技能者なら年収500万円、さらに上級職長クラスでは1000万円でもおかしくない。優秀な資格技能者と一般の技能労働者を区別して考えないといけない。一緒にするから資格技能士が損をしている。これは請負でも固定給でも同じです。

井上

 そのあたりの区別を建設キャリアアップシステムなり資格で分けていくことが必要と思います。

北浦

 また、表彰制度も考えてほしい。現行制度の多くは元請の推薦によるものだが、親方が推薦する方式に変えてもらいたい。表彰によって良い方向に変わる人もおり、職人にとっては励みにもなり、それも一つの教育になります。

井上

 我々も、自分のところの職人が表彰を受けられないような業者は評価できないとの考え方にしていきます。表彰に際しては、元請に対して対象現場だけでなく、以前の工事でも良い仕事をしており、そういった職人さんを今の現場に配置しているということを分かって貰えるようにしていきます。また、安全との関係も見ていかなければなりません。

■それら施策についても地方自治体へ浸透させる必要があります。

井上

 国が進める施策に対しては、半年か一年後に動き始めるなど時間差はありますが、近畿の場合、府県と政令市では動きが速く、頑張っていただいています。次の段階は市町村になりますが、 これら自治体では発注体制が脆弱で、古い慣習も残っています。また、制度変更等には議会の対応も必要になっていますが、我々としては少しずつ支援していきます。小さな工事でも仕事になるようにしなければ建設業界が良くならないと思っており、重要な課題だと思っています。

北浦

 建設キャリアアップシステムにしても他の問題にしても専門工事業界として提案していく必要がある。建専連でも情報交換をし合って、他地区でも良い施策があれば取り込んでいけば良いと思っている。

■今後、専門工事業者のあるべき姿としては。

井上

 今後は、改修工事や補修工事が増えていきます。どうしても新設工事の方に目がいきがちですが、補修や修繕工事の方が技術力が必要になります。都市部だけでなく地方でもメンテナンスを必要とする案件を抱えており、それに対応する企業体力を付けてもらいたい。そのため我々も維持管理に係る歩掛を高めに設定する必要もある。メンテナンスの工事の多くは自治体発注で、そのためにも発注体制の整
備が急務となっています。

北浦

 おっしゃる通り、専門工事業者はもっとメンテナンスの市場に目を向ける必要があります。特に、たくさんの職人を抱えている業者は、この分野に職人を振り分けることを真剣に考えるべきだ。たとえ小規模なインフラ補修工事であっても、 自らが元請として受注すれば職人の処遇改善にもつながるはずだ。経営の安定化も図れる。また、これからの専門工事業者は、職種の縦割りにとらわれずいろんなことが出来るようにならないといけない。大きな建物ばかりを狙わず、 専門工事業者が生きていくためにはどうすべきかという視点で発想を転換する必要はある。

■本日は、有意義な話を伺うことが出来ました。これからも業界発展のためにご尽力をお願いします。ありがとうございました。



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