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都市再生機構西日本支社 田中義浩副支社長  【2020年07月06日掲載】

多様な世代集うミクストコミュニティ実現目指す

コロナ後の新たな住まい提案


 副支社長として総務部門と住宅経営部門を担当。就任にあたっては、ウイズコロナやアフターコロナの下で、「予想されるデジタルトランスフォーメーションの進行の加速等を好機と捉え、イノベーティブな組織の実現、資源を活かした地域連携による新たな住まい、まちづくりに貢献していきたい」と抱負を語る。

 住宅事業では、西日本支社が管理する408団地約20万戸を対象に、UR賃貸住宅ストック活用ビジョンに基づき、居住安定を確保しながら、地域や団地の特性に応じた賃貸住宅の多様な活用を図るため、“多様な世代が生き生きと暮らし続けられる住まい・まち“「ミクストコミュニティ」の実現を目指す。

 取組みは@多様な世代が安心して住み続ける環境整備A持続可能で活力ある地域やまちづくりの推進B賃貸ストックの価値向上 ― の三つの視点から進めていくが、世帯構成の変化に加え大規模災害や今回の様な感染症拡大、都心一極集中と地方の過疎化、ICTの進化等の社会環境を考慮しながら、「これまでURが培ってきた住まいとまちづくりのノウハウに、防災・減災のノウハウを駆使して、地域住民や地方公共団体とのネットワークを活用していきたい」。

 また、現在の課題に対応しながらも少し先の暮らしを予測しながらイノベーティブな思考での対応が必要とし、「コロナ後のライフスタイルの変化に対応し、国家的な課題である新しい住まい、まちのあり方を提案していきたい」とも。その取組みの一つであるデジタルトランスフォーメーションでは、ICTを上手く活用し、募集サービスやミクストコミュニティを進めていく。

 賃貸ストックの価値向上では、ミクストコミュニティ実現の核となる「地域医療福祉拠点化」に向け、医療機関や大学、企業等との連携により、団地を含めた地域全体の医療と福祉施設の充実、広場や集会所を活用した多世代交流の機会創出など、生活支援機能サービスの導入を進める。

 また、居住環境整備も課題だ。既存団地の多くは1979年までに管理開始した団地が多く、経年劣化やライフスタイルの変化への対応が急務となっていることから「地域や団地特性を踏まえ、1980年以降に管理開始した団地も含め改良的投資を進めています」。

 具体的には間取りの改善やキッチン取替、フローリング化等とともに、転倒防止等に配慮した健康寿命サポート住宅や家事負担軽減を図る子育て世帯向け住宅の供給のほか、計画的修繕や耐震化率向上、団地美化とともに災害への備えを充実させる。

 さらに、ウイズコロナ、アフターコロナに向けた新しいライフスタイルへの対応として、在宅勤務に対応した住戸等を検討。都心一極集中ではなく、郊外等にも分散することで地域の魅力を満喫してもらう。自粛等により行動範囲が狭くなると、これまで以上に地域連携が重要になるとの観点から、地域の魅力を高めるために、「地域の方々や地方公共団体、民間企業との連携を強化することで、アフターコロナをより良い社会に変えるチャンスとして、地域資源を活かした新たな住まい、暮らし方を提案していきたい」。

 その地域連携の取組みとして現在、泉北ニュータウンの桃山台一丁団地でコンバージョン推進モデル事業を堺市と実施している。新たなコミュニティ拠点づくりに向け、集会所の一部をコンバージョンして隣接する広場を活用して団地とニュータウンの活性化を目指すもので、「既に団地お住まいの方と地域の方々、民間企業の参画者を七月まで募集中で、来年10月まで試行して11月からの本格稼働を目指します」。

 一方、社内では、これまでも働き方改革に取り組んでおり、今回のコロナにより、取組みの進展が早くなっただけ、とする。テレワークについては、「個人的には自分のペースで効率的に動け、通勤時間がないことで身体的にも楽になり、感染リスクも低減できた」としながら、リモート会議等は回線不良やセキュリティの問題等があるほか、「職員の事情に応じた柔軟な働き方への配慮が.必要」と指摘する。

 「アフターコロナにおいても、これら柔軟な働き方の流れは変わらないと思いますし、対面とリモートワークを使い分け、生産性を高めながら空き時間を有効に活用することも考えられ、職員の選択肢を増やすことで充実感や満足感を高められる組織にしていきたい」と語る。

 また、職員には、「これまで以上に主体性を持ってチャレンジ。上手くいかなくても、それが知見になるので過程を楽しみながら、進化し成長してほしい」と語った。

 思い出に残る仕事では、ニュータウン事業用地の最後の販売に関わったことを挙げ、「全員が一体となった取組みにより空前絶後の実績を上げた。当時は大変だったが、活気にあふれ充実した日々で達成感を味わうことができた」と振り返る。

 また昨年は本社アセット戦略部門で、民間企業と連携を模索する中で、新たなビジネスモデルなどイノベーションが起こっていることを肌で感じ、「これらの経験とネットワークを活用し、賃貸住宅をフィールドとして新たな住まいやまちづくりの提供に繋げていきたい」。

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 生まれも育ちも関西で、2年ぶりの関西の状況について、万博やIR事業への期待が膨らむ中、「新型コロナウィルスにより水を差された状態」としながら、その関西をフィールドとした活動に期待したい。

 モットーは、年齢を重ね変化してきているが「仕事もプライベートもとことん楽しむ、職員とともにとことん楽しみ、いろんなイノベーションを起こしたい」。趣味は、目的を決めずにまち歩きや食べ歩き。神戸市出身。五七歳。

   
   

 田中義浩(たなか・よしひろ)昭和60年3月関西学院大学商学部卒、平成10年10月住宅・都市整備公団、同18年6月西日本支社募集販売センター施設用地販売第一チームーリーダー、同20年6月竃k摂コミュニティ開発センター営業監理部担当部長、同24年4月西日本支社募集販売センター募集販売企画チームリーダー、同25年4月同センター販売企画チームリーダー、同26年4月同センター営業推進室長、同27年4月同センター所長、同30年4月本社アセット戦略推進部担当部長を経て今年4月1日から現職に。

 

 

 
 


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