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大阪労働局労働基準部 小野祥二安全課長  【2023年06月26日掲載】

「高める意識と安全行動築こうみんなのゼロ災職場」

「大阪発・新4S
(Safety・Satisfy・Shine・Smile)運動」

自主的な安全衛生管理活動促す


 第96回全国安全週間が今年も7月1日から7日まで、厚生労働省大阪労働局らの主唱、建設業労働災害防止協会大阪府支部らの協賛を得て、「高める意識と安全行動築こうみんなのゼロ災職場」をスローガンに展開する。昭和3年に実施されて以来、「人命尊重」を基本理念に、一度も中断することなく続けられている。
 令和4年における大阪府内の労働災害発生状況は、全産業で死傷者8849人。そのうち建設業は616人と6・9%の割合を占める。また、大阪の建設業の特徴としては墜落・転落災害の割合が高いことが挙げられる。
 大阪労働局では、今年度が「第14次労働災害防止推進計画」の初年度となることから。その期間に合わせ、中核となる大阪独自の取組みとして「大阪発・新4S運動」を推進し、事業場における自主的な安全衛生管理活動のさらなる促進を目指している。これら災害防止活動の中心的な役割を担う大阪労働局労働基準部安全課の小野祥二課長に安全行政の取組みなどについて聞いた。

   死亡災害撲滅に向けた取組み推進

■最初に、令和4年における大阪府内の労働災害発生状況についてお聞かせください。

 第13次労働災害防止推進計画の最終年であった令和4年における大阪府内の労働災害発生状況ですが、全産業で休業4日以上の死傷者数は、新型コロナウイルス感染症のり患を除き8849人となり、前年と比べて28人増加(0・3%増)しました。
 計画の目標値であった7927人以下とする目標は達成することができませんでした。死亡者数は、51人と、前年より13人減少し、目標の51人以下とすることについては、辛うじて達成することができました。
 大阪府内の建設業における死亡者数は12人と、令和3年に比べ3人減少しましたが、墜落・転落災害により7人(58・3%)が亡くなられています。
 その発生状況を見てみますと、「解体工事中に、廃材をエレベーターシャフト内に投げ込む作業中に開口部から墜落したもの」や「要求性能墜落制止用器具を着用しながら使用していなかったもの」など、基本的な墜落防止措置としての設備の設置や要求性能墜落制止用器具の使用により防止できたものがほとんどです。
 死亡災害については、業種別では依然として建設業の占める割合は高く、全体の23・5%を占める状況です。死傷者数についても新型コロナウイルス感染症のり患を除き、616人と令和3年より77人減少し、11・1%の減少となっております。
 また、令和4年においては、建設現場で作業中の移動式クレーンが高圧線に接触し、2800軒が一時停電するなど、社会的に大きな影響を与える事故が発生しております。これらを防止するためには、労働安全衛生法等の法令の遵守はもちろんのこと、「リスクアセスメントの実施」、「作業手順の遵守」、「現場で働く仲間同士が相互に注意し合える風通しの良い職場の形成」が何より重要であると考えています。

■では全国からみた大阪の状況については。

 全国においては、新型コロナウイルス感染症のり患を除き、死傷者数が132,355人(前年比1769人増)と過去20年で最多となり、死亡者数は774人と過去最少となっています。
 全国の建設業の死亡者数は281人で、令和3年の278人に比べ3人の増加となりました。
 また、死傷者数は新型コロナウイルス感染症のり患を除き、14,539人であり令和3年の14,926人より387人減少となっており、全産業のうち建設業が占める割合は10・9%です。
 大阪においては全産業での死傷者8849人に対し建設業は616人であり、建設業の占める割合は6・9%となります。
 建設業の死亡災害のうち、墜落・転落災害の占める割合については、全国では41・2%、大阪では58・3%。死傷災害のうち、墜落・転落災害の占める割合は全国では31・5%、大阪では32・7%であり、墜落・転落災害の割合が高いことが大阪の特徴として挙げられます。

■今年度の大阪労働局の目標と重点事項を教えてください。

 今年度は、「大阪労働局第一四次労働災害防止推進計画」の初年度となります。計画の目標は、「死亡災害を2022年と比較して、2027年においては5%以上減少する」「死傷災害については、2021年までの増加傾向に歯止めをかけ、死傷者数を2022年と比較して2027年までに減少に転ずる」こととしています。
 建設業では別途「建設業の死亡者数を2027年までに2022年と比較して15%以上減少させる」ことを目標に掲げています。
 大阪労働局では、14次防の期間に合わせ、その中核となる大阪独自の取組みとして「大阪発・新4S運動」を推進しております。この運動は、「安全は人々を満足させ、輝く笑顔にします」をスローガンに、労働災害の撲滅を図っていこうとするものであり、安全(Safety)、満足(Satisfy)、輝く(Shine)、笑顔(Smile)の頭文字をとって新4Sとしております。
 労働者一人ひとりが安全で健康に働くためには、安全衛生活動をステップアップする取組みが重要であり、そのため、この運動では事業場における自主的な安全衛生管理活動を促進することを目指しております。
 また、今後増加が見込まれる高年齢労働者について「エイジフレンドリーガイドライン」の周知徹底と、同様に増加が見込まれる外国人労働者の労働災害防止のため、危険体感教育や現場送り出し教育等の安全衛生教育の徹底を図り、当該労働者の教育に対する理解度を確認することも重要であると考えております。

   適切な安全衛生経費の確保など提唱

■建設業における取組み及び注意事項はありますか。

 今年の大阪府内の建設業における労働災害による死傷者数は、4月末日現在で新型コロナウイルス感染症のり患を除き、147人と前年同期と比べ16人(12・2%)の増加となっております。また、死亡者数についても5月20日時点で7人と、前年同期より3人増加し、7人のうち5人が墜落・転落災害となっています。墜落制止用器具を着用していながらも使用しなかったために墜落・転落災害に至るケースが散見されます。
 大阪労働局で展開している「命綱GO活動」をさらに推進し、墜落・転落災害を防止する必要があります。「命綱GO活動」では、墜落制止用器具のフックの掛け替え時の墜落防止を図るため、2丁掛けフルハーネス型墜落制止用器具の使用の促進を進めています。
 さらにこれからの季節、炎天下や通気不十分な場所で作業することが多い建設業では熱中症の予防対策が必須であります。
 昨年は、大阪府内の職場での熱中症による休業4日以上の死傷者数は45人と令和3年から18人の増加となっており、死亡者も1人発生しています。
 昨年に引き続き、今年も5月1日から9月30日まで「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施し、予防対策に取り組んでいます。職場における熱中症による死亡者ゼロを目指し、異常を認めたときにはすぐに救急車を呼ぶなどの対応を行っていただくと共に、労働者が「体調が悪いです」と同僚や上司などに伝えやすい職場・現場環境の実現をお願いいたします。
 皆様方にも、これらの活動の趣旨を御理解いただき、積極的に労働災害防止への取組みをお願いいたします。
 7月1日から実施される令和5年度全国安全週間におきましても、「高める意識と安全行動 築こうみんなのゼロ災職場」のスローガンの下、実施要綱に基づき、建設業における労働災害防止対策について、「足場等からの墜落・転落防止対策の実施、手すり先行工法の積極的な採用、フルハーネス型墜落制止用器具の適切な使用」や「建設工事の請負契約における適切な安全衛生経費の確保」等の実施を提唱しております。
 また、期間中YouTubeにて動画による局長メッセージや建設業に携わる方々へのメッセージを投稿し、広く労働災害防止を呼び掛けております。

   魅力的な産業へ 重要な働き方改革

■最後に一言お願いします。

 国際情勢の影響など経済情勢の先行きには不透明なところもございますが、長引くコロナ禍については、落ち着きを取り戻しつつあるところです。さらに2025年には「大阪・関西万博」の開催が予定されており、これからは、元気な大阪となることが期待され、建設業界においてもより活性化していくことが期待されるところです。
 労働災害の発生状況は、その国の文化水準に現れるといわれており、建設業に人が集い、魅力的であるためには「安全で安心して働ける職場環境の整備」が重要であり、労働災害の防止はもとより、長時間労働の抑制や週休2日制の導入等の働き方改革に積極的に取り組んで行くことが重要です。また、建設の事業については、現在、時間外労働の上限規制の適用が猶予されていますが、2024年4月1日より適用となりますので、ご準備をお願いします。



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