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大阪市港湾局 丸岡宏次 局長  【平成22年12月20日掲載】

夢洲本格稼働で整備計画に弾み

集荷の強化と創荷の実現に取り組む


国際インフラとして関西の経済活動を支え、物流交易の拠点として機能する大阪港。神戸港とともにスーパー中枢港湾「阪神港」を形成し、さらに今年8月には国の「国際コンテナ戦略港湾」にも選定され、その役割はますます大きくなってきている。それら施策を推進する大阪市港湾局では、港湾施設の拡充に努めながら、臨海部の活性化も視野に各種事業を展開しているが、その推進役である丸岡宏治港湾局長に今後の見通しなどを聞いた。     (渡辺真也)

■今年度の大阪港の整備事業からお聞かせ下さい。

丸岡局長

夢洲のコンテナターミナルが動き出したことが大きいです。スーパー中枢港湾の取り組みとして、昨年8月に夢咲トンネルが開通し、10月にコンテナターミナルのC―10〜12を一体運営を開始しました。取扱い貨物量も当初想定していた量を上回るものとなり、まずは順調な滑り出しといえます。

■夢洲が稼動したことにより在来埠頭の再編も始まる。

丸岡局長

咲洲のR岸壁をはじめとするコンテナターミナルからの移転に際しては入港料のインセンティブを実施し、コンテナ航路の移転は完了しました。また、コンテナ車両による咲洲内の道路渋滞解消の面からも埠頭の再編は必要です。さらに夢洲が動き出したことにより、先行開発地区の土地処分として24年度の売り出しに向け、準備にかかる必要があります。

■土地処分にあたってはどのように。

丸岡局長

物流と産業ゾーンを予定しております。事業者募集にあたっては需要動向を見極めながらのものとなります。8月に国際コンテナ戦略港湾に阪神港として指定を受け、また国の国際戦略総合特区にも規制緩和や税制上の優遇措置などを盛り込んだ特区提案しており、これらを合わせて臨海地域一体の活性化を図りたいと考えております。

■本来の港湾機能の充実を目指す。

丸岡局長

戦略港湾としては、現在、阪神港の取扱量は400万TEUですが、これを2015年に490万TEU、さらに2020年には590万TEUにするため、まずは国内ハブとしての機能を高め、将来は東アジアの国際ハブ港湾を目指すこととしています。

■そうなると港湾インフラの整備も重要になってきます。

丸岡局長

そうですね。資源の99%を輸入に頼っている日本の場合、港湾機能をきっちり確保しておくことは重要です。整備にあたっても漫然としたものでなく、リノベーションなどにより進化し、目標を掲げて機能を見直し高めていくことは大事なことで、ハブ港湾を目指すという目標は目標として、その取り組みの中で港の機能を時代のニーズに合わせ、広く港湾サービスを提供していくことが必要ですね。

■来年度以降の取り組みでは。

丸岡局長

今後の課題は、阪神港に荷物を集める集荷の強化と開発地区に産業を立地しての創荷の実現です。特に集荷の取り組みとして、西日本の貨物を集約する内航フィーダの取り組みを実施していきます。さらに港湾経営に関して一体的に運営するため、現在大阪と神戸にあるそれぞれの埠頭公社を株式会社として民営化し、2015年を目途にこれを統合して阪神港の港湾経営にあたります。直に連携できない部分もあるとは思いますが、阪神港として連携することは大事なことです。

■いずれにしろ夢洲が中心となる。

丸岡局長

ええ、これらの取り組みを通して大阪、関西の経済の発展に寄与していきたいと思っております。また大阪市では、市の成長戦略として、大阪駅北ヤードと並び臨海地域を成長戦略拠点と位置付けており、これを両輪とした取り組みを進めていくことになります。


業界のハード整備力に期待

来年度は土地処分、企業誘致が課題

■咲洲と舞洲の状況について。

丸岡局長

舞洲については、スポーツアイランドの占める割合が大きいですが、物流関連用地でロジステック産業の集積が出来ればと考えております。 咲洲ではコスモスクエア二期地区での土地処分が課題です。土地に関しては少しながら動きが出てきたかなと感じます。民間マンションをはじめ学校施設、 キャナル沿いにも集客施設が立地し、私自身はそんなに不便でもなく良い場所だと思っております。

■大阪府の咲洲庁舎ができ、来年には本格的な移転も始まります。

丸岡局長

来年5月までに約2,000人の府職員が移ってきます。市としてはアクセスの改善が重要だと考えており、地下鉄のコスモスクエア駅から庁舎までの ペデストリアンデッキ整備を、民間とも協力しながら実施していくとともに、咲洲トンネルの無料化も検討中です。また、国際フェリー埠頭の前面道路でコンテナ車による 渋滞が発生しており、この対策にも取り組んでいきます。

■咲洲と夢洲における土地売却や企業誘致では、府と市、それに経済界と一緒になって取り組まれております。

丸岡局長

市と府、経済界で昨年10月に企業誘致等協働チームを立ち上げて取り組んでおります。土地処分にしろ企業誘致にしろポイントはトップセールスで、 いかにトップまで話を持っていくかでしょう。余談になりますがコスモ地区に移転してから業績が伸びたとおっしゃる企業もあり、励みになっております。

■さて、来年度事業の見通しはどのように。

丸岡局長

予算的にはやはり厳しいものとなりますね。経済力アップと安全快適な暮らしのアップ、文化観光力アップの三つを柱に据え、その中の経済力アップでは、 夢洲の国際コンテナも入りますし、観光力アップでは来年3月に世界最大の客船クイーンメリー2が天保山に停泊するほか、中国からのクルーズが増加しており、 これらと連動した観光への取り組みを計画しております。

■安全ではやはり津波などの防災対策がメーンとなる。

丸岡局長

そうですね。高潮や津波対策を中心に計画に沿って実施しております。本来ならもう少しスピードを上げたいところですが、 財政状況に鑑み着実に実施していきます。港湾利用者に対するサービスとともに市民の生命、財産を守るということも港湾局の使命のひとつであり、 この点についてはきっちりと実施していきます。

■ところで建設業界は非常に厳しい環境にありますが、この状況をどうご覧になります。

丸岡局長

ハードの力というものはすごく大きいものがあります。都市の景観を変えたり魅力を創りだしたり、例えば中之島では、八軒家浜をはじめ 川沿いを整備したところイメージが劇的に変わりましたね。ああいったものはソフトでは対応できない部分でありハード整備は重要です。 ソフトとハードの両輪で都市の核なり、ブランド力を上げていくことや、人が安全で快適に暮らすためには手を入れることが必要で、それらを担うは建設業でしょう。 また災害時に重要な役割を果たすのも建設業で、これからも頑張ってほしいですね。

■今後も、大阪港の整備にご尽力下さい。ありがとうございました。

丸岡宏次(まるおか・こうじ)局長の略歴
 昭和50年4月大阪市採用、教育委員会事務局、同58年10月総務局行政部文書課主査、同61年4月同人事課主査、同年10月同人事課人事係長、平成元年4月同人事課長代理、同3年4月人事部企画主幹、同5年4月経済局中小企業部貿易観光課長、同8年4月同部国際経済課長、同10月経済局副理事、同9年2月フランス共和国パリ市駐在、同12年4月教育委員会事務局スポーツ部長兼ワールドカップ推進室次長、同13年4月ゆとりとみどり振興局スポーツ部長、同15年4月同振興局理事、同20年4月同振興局長を経て、今年4月から現職に。京都大学法学部卒。香川県出身。五八歳。


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