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interview
九州建専連 杉山秀彦会長  【平成23年4月21日掲載】

重層構造では職人に光が当たらない

施工会社は直用で当然


建設産業戦略会議で「社会保険未加入企業の排除」「重層下請構造の是正」という基本方針が打ち出され、専門工事業界はかつてない構造転換を迫られている。一方で職人の直用化などの負担増に対し、ためらいを見せる経営者も依然多く、さらに都市と地方での温度差もあり、業界全体としての合意形成には課題を残す。本紙では、建設産業専門団体九州地区連合会(九州建専連)の杉山秀彦会長に現状や今後の取り組みなどを聞いた。      (中山貴雄)

■九州では職人を直用している業者が多いと聞くが。

杉山会長

「職種や地域によって直用比率に違いはある。一部の地域で全く直用をしてないところもあった。だが、近畿地方整備局などで直用を評価する動きが始まったことから、『そんなことでは今後仕事が取れなくなる』と説得した。今では、九州全体としては直用化の方向でまとまっている。全てを直用とするのは現実的に難しいが、少なくとも30〜50%程度の職人を直用することは必要だろう」

■直用の動きを冷ややかに捉える業者もいるが。

杉山会長

「自社で直用にして給料を払う場合と、下請に出してそこが職人さんに給料を払う場合。どちらがたくさん払えると思う。同様に一次の直用職人と三次の職人が同じ給料をもらえると思うのか。結局、重層になればなるほど職人さんに渡る金額は少なくなる。例えば四次業者なんかだと途中で抜かれて受注金額は一次の80%程度しかない。重層で間に業者が何社も入ると、職人さんに光が当たらない」  
「日給月給でいい。そう考える経営者や職人さんも確かにいるだろう。だがそんなことでは、いつまでたっても若者がこの産業に入ってこない。いわゆる『日雇い』が業界のイメージを低下させている。個別の話で恐縮だが、うち((株)スギヤマ)では『職人さん』ではなく『社員』じゃなきゃいかんと思い、月給制の直用を進めた。これには元請の清水建設さんも理解を示し支援していただいた。また今後、重層が二次、三次までということで義務化されていくと、業界全体として直用を増やさざるを得ない」

■そうなると下請の経営がもたないとの懸念もある。

杉山会長

「そんな会社は働いている人に負担をかけて成り立っているということ。施工会社がそれで喰っていていいのか。今は受注単価も下がり、厳しいかも知れない。だが、『職人さんたちを大切にする』、そんな努力をしている会社が報われる業界を目指さないと。また、年収もせめてゼネコンさんの半分くらいはもらってもいいだろう。元請さんも専門工事業者も同じ建設会社。一緒になって現場でものをつくっている。さらに建設業には災害時に地域を守るという使命もある。職人さんも、せめて一般サラリーマンと同程度の賃金をもらってもいいのではと思う」

■手取り収入が減るから直用を嫌がる職人もいる。

杉山会長

「直用でも能力給にすればいいだけの話だ。なにも下請や一人親方にする必要はない。バリバリやる直用の職人さんには給料を倍にするとか。そうすれば、職人さんもやりがいがでてくる。会社が制度をつくればよい。やり方はいくらでもある」

■大阪のような都市部では直用の比率が低い。

杉山会長

「大阪の場合は現場の規模が大きい。だから、大手の名義人にはゼネコン社員のかわりもできる人材が必要になる。単純に職長の仕事だけではなく、工程管理の能力も求められる。それに対応するためには、専門工事業者にも技術者が必要とされてきた。直用比率が低いのは、ある意味仕方がない部分がある。九州では大規模と言われる工事も、大阪ではいくらでもあるから・・・」

■ところで、先日の建専連西日本ブロック連絡会では、社会保険について各地区の意見をまとめたそうだが。

杉山会長

「建設産業戦略会議の基本方針である『保険未加入企業排除』を支持することで合意した。具体的には、積算で別項目をつくり社会保険の金額を入れるよう発注者や元請に対して求めていく。また、一次業者が二次下請に出す場合にも契約書に保険料を明記させる。さらに、未加入企業を使った元請さんに対しても罰則が必要になる。やはり、元請・下請双方が未加入企業を使えない制度にしないと上手くいかない」

■登録基幹技能者については。

杉山会長

「管理と技術・技能を兼ね備えているのが登録基幹技能者だ。しかし、今は位置付けが非常に曖昧。総合評価での加点も重要なことだが、それだけでは専門工事業者も『取得しなれば』という差し迫った気持ちになれない。同じような資格でも主任技術者なら施工体制台帳に載る。基幹技能者が主任技術者の要件になれば、みんな努力して資格を取る」

■現時点では取得のメリットがあまりない。

杉山会長

「一級技能士の時のように、『またか』という思いも正直あった。一方で資格制度があるから社員教育できるという部分もある。専門工事業界で一番欠けているのが社員教育。技術面でも管理面でも、若い人に『先輩の背中を見て学べ』と言うだけの世界だった。社員の能力を高めるには、資格を取ることも大事。講習で教育の場を与えてもらえる。そのような意識で取得させているのが現状だ」

■技能伝承のため、発注面で直用や教育を正当に評価する必要がある。

杉山会長

「職人さんがいない会社は全て下請に仕事を出す。極端な話、請負だからいくらでも安く契約できる。例えば元請から百円で契約した工事を下請に『八十円でやってよ』で済ませる。直用の会社はそういう訳にはいかない。だから、しんどくなる。下請に『この金額でやって』で済ませてしまう会社は、まさに名義人制度にあぐらをかいている。ゼネコンさんは工程管理が仕事で施工は専門工事業者。ものづくりを担っているのに会社には職人さんがいない。これでは、健全な施工会社ではない」



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