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株式会社 三原組 三原光治副社長  【平成24年05月10日掲載】

三原副社長に聞く当時の状況

爆弾低気圧の被害復旧で 地元業者の面目躍如

再度の出動、道路守る 地の利・人の利生かして


 今年4月3日に発生した「爆弾低気圧」は全国的に大きな被害をもたらし、大阪府箕面市では道路が冠水し、倒木が道路を塞ぐなどの被害が発生した。大阪府からの要請を受け復旧作業にあたった且O原組(箕面市稲1−5−3、三原金一社長)では、直ちに体制を整え、翌日には復旧を終えるなど被害を最小限に食い止めることに貢献している。作業の陣頭指揮にあたった同社の三原光治副社長は「地域業者ならではの対応」と、地元業者の役割を強調する。その三原副社長に当時の状況を語ってもらった。

 「水路が溢れ道路が冠水したから状況を確認してほしい」と大阪府池田土木事務所から同社への出動要請の一報があったのは3日の午後2時。これを受け三原副社長が現場へ駆けつけ、府の職員とともに現場検証を実施している最中に、「箕面ドライブウェイでがけ崩れが発生した」と別の職員から連絡があり、現場へ急行したところ、土砂が道路を塞いでいたことから、その場で府の職員から三原副社長に対して土砂撤去などの応急処置の要請が行われた。

 これを受け三原副社長は人員と資機材の手配を行い、午後4時には作業員4人とダンプトラック3台、重機を確保して作業を開始した。作業は、交通規制を行いながら出水によりヘドロ状となっていた土砂をポンプで排水しながら人力でダンプに積み込むもので、午後7時には一応の処置を終えることができた。

 作業を終えた三原副社長は、帰社して残務整理を行っていたが、午後9時過ぎ、池田土木事務所から「倒木がドライブウェイを塞いでいるので直ちに撤去してほしい」と再度の出動要請があった。この道路は地域住民の生活道路でもあり復旧は急務のものであることから、三原副社長は現場の状況を確認するために現場に向かったが、この時「倒木の切り出しには専門家が必要」と判断し、古くから付き合いのある地元の造園業者である森田木材に同行を依頼、現地で落ち合うこととした。

 三原副社長によると現場の状況は「倒木に電線が接触しており、夜間作業は難しく、作業には送電停止が必要」と判断、その旨を池田土木事務所に報告。その後、同土木事務所から「明朝から送電停止とともに作業を開始したい」との連絡が入り、4日午前7時からの作業となった。 

 翌日の作業では、倒木が重なり合った状態であり、切り出しの状況によっては別の倒木が電線を切断する恐れがあった。ベテラン職人の見立てでは「成功率は6分4分」とされた。土木事務所職員や関西電力の社員が見守る中で行われた作業では、電線を引き下げたこともあり倒木による切断もなく無事終了、午後1時には作業が完了した。

 三原組では、これまでにも災害出動の経験があり、現在では災害時には社員を3班に分けて対応する体制を取るほか、市内2カ所に資機材置場を確保。土嚢袋や中詰め用の砂を常備しており、出水時には同所で土嚢詰めなどを行うこととしている。

 さらに三原副社長は、自社の仕事を後回しにし、今回の作業を優先してくれた森田木材の協力に謝辞を述べる。「倒木伐採にあたりチェーンソーやクレーン、高所作業車、発電機まで用意してくれた。我々だけでは短時間のうちにあれだけ準備できたかどうか」とし、特に作業にあたったベテラン職人の技術には「ただ、ただ恐れ入るばかり」とプロの技に敬服する。

 しかし、同社の協力を得られたのも先代から親交があったからこそで、そこは地元同士の強みがある。また、急な呼びかけに対しても「土地勘があるだけに、場所をいえばすぐに駆けつけてくれた」と地の利が大きくものをいった面もある。

 自然災害は時と場所を選ばず発生するため応急復旧は「待ったなし」の状況となるが、地域事情に通じ、仲間内の結束も固いのが大手ゼネコンにはない地域業者の強みで、今回の事例は、まさに地元建設業者ならではの対応といえる。

 「しかし」と三原副社長は言う。これら活動に対する特別な優遇措置がある訳でもなく、経審での加点にも影響することもない。むしろ「大きな利益が出るわけでもなく、かえって重機のリース料や資機材置場などの維持管理での経費がかさむだけ」と実態を明かす。

 現在、地域建設業を取り巻く状況は厳しいものとなっている。機械や人員を抱える余裕もなく、災害対応はもとより、除雪や維持管理等の地域維持事業を担える企業が不足しつつあり、その対策として国土交通省では、地域維持型JV等の新たな契約方式の導入を打ち出しているが、その中心となるのはやはり地域建設業者に他ならない。

 大雨や台風シーズンになると、いつ要請があるかと気が気でないこともあるし、仕事自体ははっきり言ってしんどいとは思う。しかし、要請があれば何とかしなければと思うのは、この仕事に携わる者ならみんな同じでしょうね」と三原副社長。今後も地域に根ざした事業展開を図っていきたいとしている。



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