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(株)日本リサイクルマネジメント 檀野和夫社長  【平成25年01月07日掲載】

注目集める 家庭ゴミ固形燃料「RDF」

自治体の発電所など多用途に

施設建設から販売まで国内唯一の専業会社


 国や地域、企業が持続的な発展と成長を続けていく上においては、限りある資源の有効活用やエネルギー消費における制約、さらに環境対策も不可欠なものとなっている。こうした中、ゴミ固形燃料の「RDF」への注目が高まってきている。一般的な家庭ゴミを専用施設で加工したもので、RDF発電やバイオマス発電の燃料として使用されている。そのRDFの施設建設から販売までを一貫して取り扱っているのが鞄本リサイクルマネジメント(本社・横浜市)で、現在、全国に21カ所の施設と5つの発電所の管理・運営を手掛けている。同社の檀野和夫社長は「東日本大震災以降、脱原発の機運が高まり、RDFの需要が増えてきた」と語る。その檀野社長にRDFの今後の見通しと事業展開などを聞いた。  
                                                (聞き手・中山貴雄)

■まずは事業内容からお聞かせ下さい。

 当社は、JFEエンジニアリングのグループ企業として、同社が建設したRDF施設の運営とメンテナンス及び再生燃料であるRDFの販売を手掛けている日本で唯一のRDF専業会社です。JFEエンジニアリンググループとして、自治体が建設するRDF施設を受注し、建設からRDFの販売までを一貫して行います。
 再生燃料にはRDFと、RPFがありますが、RDFは家庭で排出される一般的なゴミを加工して燃料としたもの、RPFは産業廃棄物である紙やプラスッチクを固めたもので、法的な規制等がかなり違っています。その中でもRDFは、家庭ゴミであるだけに有害物や危険物が混じっておらず、安全や安心の点でもかなり違っております。
 現在、RDFの施設は全国にありますが、主に関東以西で多く事業展開しております。施設は全部で61カ所あり、このうち当社が建設した施設は21施設で、全体で約42万dのRDFを生産し、このうち10万dが当社で建設した施設で生産されたものです。

■RDF施設に関する規制、制約等は。

 環境省が100d以上の廃棄物は焼却炉へ、100d以下のものについてはRDF施設へとガイドラインで定めており、それに基づき補助金が交付されることから小規模施設が多くなっています。RDF施設を採用するのは、だいたい人口が5万人未満の中小市町村となりますが、これらの市町村は環境面からも焼却炉が建設できないことが多いのです。当初は、RDF施設を建設しても燃料としてのRDFに対する認識が殆どなくRDFの利用が少なかった。このため、県がいくつかの自治体を統括してRDFの発電所を建設したのが、現在、全国にある5つの発電所です。これら発電所では、現在生産されているRDF42万dのうち30万dが使われ、民間への供給量は12万d程度にとどまっております。

■RDFが注目される契機となったのは。

 RDFの歴史は、廃棄物処分と密接に関わっております。従来のゴミ処理は焼却・埋立方式で実施されてきましたが、1980年代後半から90年代前半にかけて環境問題がクローズアップされてきたことと、ゴミ資源化として当時の通産省がモデル事業として一般廃棄物から固形燃料を作ろうとした動きが出てきました。これに対応して1991年に川崎製鉄と伊藤忠商事がRDFを研究していた東洋燃機という会社の事業を継承する形で日本リサイクルマネジメントを設立したのが始まりです。
 最初は伊藤忠が主導し、川鉄が技術面を補完する形でしたが、その当時は焼却埋立方式が主流であり、自治体のRDF施設導入も低調でした。このため当初は実証プラント程度しか建設できず、当社も民設民営の施設を数カ所建設しただけでした。しかし、96年にダイオキシン問題が発生したことにより状況が大きく変化しました。

■環境問題ですね。

 環境省によるダイオキシン防止に係るガイドラインが策定され、その中では、新設されるゴミ処理施設について24時間連続運転が可能で、焼却能力が一日あたり最低でも100d以上の焼却炉を設置することとされ、100d未満についてはRDF施設とすることとされました。これにより中小市町村でRDF設置の機運が高まり、現在ある施設のうち30カ所はその当時に建設されたものです。当時はまた、環境関連企業による新規参入も増え、ピーク時には17社ほどあり、それを背景に2000年前後に30以上の自治体における施設が完成されました。
 しかし、施設は建設されたものの、生産されたRDFの販路が開拓されていなかったことから、RDFをいかに処分するかが問題となりました。そこでRDF発電所を建設し、RDFを集中的に投入して発電事業に取り組むこととなったわけです。残りのRDFについての大半は大手製紙企業が燃料として活用することになりました。
 ただ、RDF発電自体は、現在のバイオマス発電の流れには乗っておりますが、5つの発電所は建設されてから約十年が経過し、設備面での課題から必ずしも効率的に運用されているとは言えなくなっており、将来的に存続するかどうかについてそれぞれの県と自治体が協議を進められております。

■なるほど

 こうしてRDF事業は本格化してきましたが、2003年に三重の発電所で死傷者が出る事故が起こり、「RDFは危険」との見方が広まり、国の規制が強化され、そこでRDF事業の普及がストップしました。それ以降、2010年まではRDF事業にとっての冬の時代となり、施設の新設がなくなるとともに、当社を除く他の企業は維持管理業務を子会社に引き継ぎ、数社を残してRDF事業から撤退していきました。

■必ずしも順調に来たわけではない。

 当初は、なんとかして民間企業に売れないかと営業に回りましたが、当時は原油価格が安いこともあってあまり売れず、自治体の中にはRDFそのものを焼却処分するところも出てきました。ところが、原油価格が値上がり始めた2010年頃から状況が好転し、当社に対してRDFの購入を希望する企業が出てきました。これは、原油高を受けてバイオマスボイラーを設置する企業が増え始め、その転換が一斉に行われたことによるものでした。

絶対量不足で施設の新設促進に力

■原油高が事態を変えた。

 ええ、バイオマスボイラーへの一斉転換が始まったことにより、まずその燃料となる木材チップ等の入手が困難になり、代替燃料として質の悪いプラスチックなどを使用したことから、ボイラーや設備の損傷が激しくなったため、新たな燃料としてRDFに再び着目してきたわけです。
 このため当社としても経営戦略の転換を図りました。民間企業への販売経路を拡大することで、RDFの処理先が見つかれば自治体もRDF施設建設に乗り出すだろう考えました。特に100d以下の自治体で、施設建設にあたり適当な立地先がないところなどをターゲットに定め、販路の拡大と安定を図り、販売先が決まった時点で自治体に提案するとした戦略を立てて事業を進めてまいりました。
 さらに、この状況の中でRDFに対する追い風が吹きました。先程言いました三重県の事故に関して「貯蔵していたRDFが発酵して爆発した」とされていた当初の見解が間違っていたことが消防庁の調査で明らかになりました。これに伴いRDFの貯蔵に関する規制が緩和されました。
 さらにまた、会計検査院からRDF施設の運営に関して、各自治体に経営改善を求める勧告がなされましたが、61施設のうち、当社が建設を担当した21施設に関しては経営状況が良好であったことから、問題を抱えた自治体から当社に対してアドバイスすることを要請されました。これを受け当社では、アドバイザーとしてそれら施設を巡り助言を行っています。

■運営効率の差は何が要因ですか。

 一つは、建設した企業が撤退したことにより、自治体がRDFの知見がない業者に業務を委託したことが挙げられます。それら業者は、RDFに関する知識やノウハウの蓄積が全くない業者であったことから、メンテナンスが不十分でコストも高くなり、生産されるRDFの質も低下し、そのためさらに売れなくなるという悪循環に陥っていたことが挙げられます。
 これに対して当社では、大手の自動車メーカーや製紙会社でRDF利用の実績がありました。このうち製紙会社では、RDFに含まれる塩素濃度、実はこれが最大の課題なんですが、この塩素濃度が高いためボイラーの傷みが早くなるという問題がありました。製紙会社の基準では塩素濃度の含有量を0.3%とし、これに対し当社のRDFは平均0.5%程度となっておりました。このため品質改善が求められ現在では、ゴミの分別段階で塩化ビニール類のより分け等を実施し、またバーク材や下水汚泥等を混合することにより、基準値を下回ることになりました。

■企業努力もあるわけですね。

 また、東日本大震災以降、脱原発の機運が高まったことにより、再びバイオマス発電が脚光を浴びだしました。しかし、企業のバイオマス発電施設では、1回あたり約10万dの燃料が必要となる上、多くの企業が一斉にバイオマスに転換したことから、さらに燃料不足が顕著になってきました。
 この状況にあって良質な燃料資源であるプラスチック類が国外へ持ち出されており、燃料不足に輪をかける状態となっています。現在、国内には粗悪な廃プラスチック等しか残っていない状況で、農水省では、間伐材などの森林資源の利用を呼びかけておりますが、木を切り出し、搬送するための人も資金も仕組みもない状態となっているため、国内にある資源はバイオマス燃料として取り合いが続いている状況です。
 これらを背景にRDFとともに下水汚泥に対する需要が増加してきましたが、下水汚泥の場合、乾燥汚泥として燃料に転換しますが、水分が多く乾燥させるために多量の燃料が逆に必要となり燃料化が難しい部分があります。このため既に実績のあるRDFがよりクローズアップされてきたわけですが、先程から言っておりますように絶対量が不足している状態です。現在生産されている42万dのうち、30万dが既存のRDF発電所へ供給され、それも平成30年頃までの契約となっています。
 残りの12万dに関しては、メーカーのバックアップのない自治体に対して運営とメンテナンスを引き受け、そこで生産されたRDFは当社が買い取り、責任を持って民間企業に長期契約で売却するとした提案を行っており、少しずつ成果が上がってきております。

■課題はRDFの増産ですね。

 RDFが売れるとなれば、ゴミ処理施設の新設にあたり、RDFを選択肢の一つとして検討を進めている自治体も出てきております。RDF施設では焼却処理をしないためダイオキシン等の有害物が発生せず、水も施設内で循環し汚水も排出しないため、大気汚染や汚水処理の問題が発生しないという、地域に受け入れやすい特徴があり、通常のゴミ処理施設に比べ住民の反対は強くありません。また生産されたRDFは地元のボイラーで燃やしたり発電したりすることで、公共施設に熱供給することで地元への還元が可能となります。実際、ある自治体では、RDFを公民館や学校での暖房や温水プールに活用しております。
 さらに、震災被災地域の中には、ゴミ処理施設に隣接してRDF発電所の建設を計画している地域もあります。このほか京都府や香川県、徳島県等の市町村からの引き合いもあります。
 重油との比較では単価で30分の1、熱量では2分の1となりますが、CO2削減では7割の効果があります。環境面から見てもクリーンであり、次世代の燃料になり得ると思っております。現在では、RDF不足を解消することが急務となっているため施設の新設促進に力を入れております。いずれにしろRDFは需要者と供給者の双方にとってメリットのある事業だと思いますね。

■いろいろとお聞かせ頂きありがとうございました。今後のご活躍を願っております。



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