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樋口尚也衆議院議員(大阪府選出 公明党)  【平成25年08月29日掲載】

建設行政の今後の動き

安定した公共事業必要

保険料含めた労務単価別枠計上を


 日刊建設新聞社はこのほど、大阪府選出の樋口尚也衆議院議員(公明党)にインタビューを行い、建設行政の今後の動き等について聞いた。樋口氏は、今秋の国会で国土強靱化に向けた法案の成立を目指すとともに、現在の建設業界に関しては、大手ゼネコンでの勤務経験から、技能労働者や技術者不足に懸念を示しながら、「人材の育成と確保には、長期的展望による安定した公共事業が必要」と述べ、今後の公共事業のあり方について語った。

(聞き手・中山貴雄)
 

 政府与党の動きについて樋口氏は、世界でも屈指の自然災害大国である我が国では、防災・減災への備えは不可欠だとし、このため党の政策である「防災・減災ニューディール」と自民党の「国土強靱化法案」を一本化した「防災・減災等に資する国土強靱化基本法案」の成立を目指すとともに、予算確保に向けた取り組みを進めていくとする。

 また、これら防災・減災対策を含めた社会基盤の整備にあたって樋口氏は、「公共工事悪玉論」の風潮を払拭する必要があるとする。自然災害に対する備えの重要性を、国民や地域住民に丁寧に説明して公共事業への理解を訴えていくことの必要性を説く。

 さらに、それら公共投資を「長期にわたり継続して投資することが重要」と指摘する。右肩下がりの日本に比べ、欧米各国では法人税を下げ、消費税を少しずつ上げながら公共事業を増やしてきた。この点を踏まえて「デフレ脱却の観点からも長いスパンで少しずつ、安定的に仕事を出していくこと」とし、「そうしなければ人も増えず、公共事業の担い手もいなくなります」と先行きに懸念を示す。

 技能労働者はもとより、元請企業の技術者も不足傾向にある現状について樋口氏は「現下の状況で人材を確保することは確かに困難ではあります。学生にもゼネコンは人気がなく、公務員や設計事務所の人気が高い。おそらくゼネコンの人事担当者も頭の痛いところだとは思いますが、入社すれば定着率はそんなに悪くはないと思います」としながら、ただ、採用に苦労しているのではと見る。

 建設業の人材不足については「技能労働者やゼネコンだけなく、地方公共団体等の発注者側の技術者も少なくなってきている」とする。そのためにも、長期的な展望の下に、計画的に仕事を出すことで人を雇い、設備投資もできるような環境整備が必要で「我々の先人が築いてきたインフラをしっかりと守っていかなければなりません」と決意を述べる。

 法定福利費の確保をはじめ、技能労働者への適正賃金支払いなど、処遇改善に関して樋口氏は、「保険料を含めた労務単価の別枠計上が必要では」との見解を示す。特に労務単価については公共工事に限らず民間工事も含め、「人件費に手をつけてはならない」と強調。適正賃金支払いに関しては太田国土交通大臣自らが要請したこともあり「これは国策である」とし、末端まで適正に支払われることの必要性を訴える。

 適正賃金支払いは「デフレから脱却する上でも重要だ。給与や可処分所得が増えることで需要が生まれ、企業の生産性も上がり雇用も増え、法人税等の税収が増えるといった正しいスパイラルとするためにも給与を上げることが必要」としながらも、まだまだ行き渡っていない状況を鑑み「フォローアップも含めて政治家としても見てゆく必要がある」とした。

 業界を取り巻く閉塞感の要因の一つに樋口氏は「予見可能性が出来なかったこと」を挙げる。具体的な計画や発注予定などが明確に示されない中では、企業側も人員や機械の手当の見通しがつかず、経営計画も立てられない状況にあった。この点を指摘しながら、「アベノミクスではそれが可能となった」とする。

 これと連動して樋口氏は同党が掲げる「財政や公共工事の見える化」を推進していくとする。従来では、橋や道路の整備についても予算の使い方や整備の必要性、耐久年数や整備効果などが明らかにされなかったことから、それらを「見える化」することで「無駄を省き、公共工事は国の財産であり、国民の生命を守るものであることをしっかりと丁寧に説明しないと理解は得られない」と語り「誰が見ても分かるように、きちんと説明していかなければならいでしょうね」と今後の公共事業のあり方にも言及した。

(文責・渡辺真也)
 樋口尚也(ひぐち・なおや)
平成6年創価大学法学部卒、同年4月清水建設入社、東京支店建築部、法務部、営業部、関西事業本部営業課長を経て、同24年12月の総選挙で比例近畿ブロックで初当選。国土交通、災害対策特別委員会委員、福岡県出身。42歳。
(聞き手・文責=渡辺真也)


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