日刊建設新聞社   CO−PRESS.COM
堺市議会 平田多加秋議長    【平成26年01月06日掲載】

未来へ飛躍する自由・自治都市へ


 歴史・文化が香る「自由・自治都市」として発展している堺市。平成18年4月に政令指定都市に移行し、現在、約84万人の人口を誇る南大阪の中核的都市として、関西の文化・経済を力強く牽引している。都心地域では、まちづくりの目標を「人が集い、交流し、賑わいと活力のあふれる都心」として、重点地域に挙げている堺東駅周辺地域や堺駅周辺地域、旧市街地周辺地域のまちづくりを推進している。また、世界遺産登録を目指す「百舌鳥・古市古墳群」など、堺市を代表する歴史・文化の取り組みも進めている。これらについて、堺市議会の平田多加秋議長に聞いてみた。

  堺東駅周辺など都心を活性化

  環境濠都市として歴史・文化も重視
 

■はじめに堺市の将来ビジョンについてお聞きします。

「堺市は平成23年3月に『堺市マスタープラン〜さかい未来・夢コンパス〜』を策定しました。その中で堺の将来像として『未来へ飛躍する自由・自治都市〜安らぎ・楽しみ・活躍する場として「のぞまれるまち」〜』を目指しています。このマスタープランを踏まえ、都心地域においては、平成32年度(2020年度)までを計画期間とするまちづくりの指針として、『堺 都心のまちづくりプラン』を平成24年7月に策定し、これに沿ってまちづくりを進めているところです」

■都心のまちづくりプランの詳細について教えてください。

「プランでは、まちの特性や取り組み状況を踏まえ、都心及びその周辺地域を特徴ある3つの地域に分けています。南海高野線の堺東駅周辺地域は、市役所・合同庁舎といった行政機関などが集まる、本市随一の中枢性を有する地域であり、堺を代表する賑わいと風格のあるまちなみの形成や都市機能の充実により、市民や来訪者がそれぞれの目的に向けていきいきと活動するまちを目指しています。次に南海本線の堺駅周辺地域は、都心地域の西の玄関口としての賑わい・交流の機能充実と、海に開かれた水辺空間を活かした歴史と潤いの感じられるまちづくりを目指しています。中でも堺旧港周辺地域については、同じく平成24年7月に策定した『堺臨海部再生・創造ビジョン』に基づき、海辺を活かした賑わいづくりを意識しています。堺東駅と堺駅の中間に位置する旧市街地周辺地域は、大道筋・大小路沿道の商業・業務機能の強化と、まちの歴史・文化を活かした魅力の創出により、来訪者が堺らしさを楽しみ、市民がまちに誇りと愛着をもって暮らすまちを目標としており、観光ネットワークの形成を図ります」

■大きく三つのエリアに分けて整備されるのですね。

「はい。堺の場合、まだ江戸時代の町割りが残り、さらに戦災を免れ、かろうじて残った古い町家が今も存在しています。そのような部分を含む、いわゆる環濠都市は、中世の繁栄を中心として歴史・文化を大切にし、この地域に残る歴史的風致を維持向上するため重点区域に設定して、国の歴史まちづくり法の認定を受けています」

■歴史・文化にも重点を置いておられる。

「『堺市歴史的風致維持向上計画(案)』を策定して国に申請していましたが、昨年11月22日に認定されました。大阪府内では初めての認定となります。歴史的風致とは、歴史まちづくり法で『地域固有の歴史及び伝統を反映した人々の活動と、その活動が行われる歴史上価値の高い建造物及びその周辺の市街地とが一体となって形成してきた良好な市街地の環境』と規定されています。人々の活動と建物などが相まって醸し出される良好な歴史的環境のことです。堺市は百舌鳥古墳群に代表されるように古代から輝く歴史を有し、中世の自治都市としての繁栄など、各時代に様々な歴史資源や新しい文化を築き、市の特徴ある歴史的風致を形成してきました」

■昔から縁のある文化人や作家も多い。

「環濠都市の中心部において文化観光拠点整備事業に取り組んでいます。昨年11月には、堺市立歴史文化にぎわいプラザの施設建設工事に着手しました。この施設は千利休や与謝野晶子をテーマとした文化施設と、堺観光の玄関口となる観光案内施設、大型バスの駐車区画も備えた駐車場で構成される公共施設、それに民間事業者が飲食などを提供する来訪者サービス施設を一体的に整備し、まちの賑わい創出と地域経済の活性化、都市の魅力向上を図る堺市文化観光拠点となるものです。平成27年3月の開設を目指しています」

■堺の特色のある歴史・文化を広く発信して観光集客を図ろうと。

「この施設は堺市堺区宿院町西2―1の一部、旧市立堺病院跡地の約4500平方メートルの敷地に建設する鉄筋コンクリート一部鉄骨造3階建て、これに木造の茶室を併設した総延べ床面積約3500平方メートルの規模です。1階に観光案内ゾーンと千利休展示ゾーン、2階に与謝野晶子展示ゾーンを設け、管理ゾーンとして1・2階に実習室や講座室、企画展示室を設置します。本格的な茶室や茶庭を整備するとともに、千利休が造った茶室のうち唯一現存する茶室である国宝・待庵の祖形を復元することで、千利休によって大成された茶の湯に触れることができる施設となっています。また、伝統と新しさの双方が同時に存在する堺らしさを育み、新しい堺のまちの姿を創出しています。さらには豊かな緑で、かつての環濠都市をイメージした緑の環濠の創出を狙っています。与謝野晶子展示ゾーンには、与謝野晶子を顕彰する生誕の地・堺として、業績やメッセージ、生き方などの書籍や縁のある品々を展示して発信する与謝野晶子記念館を設けます」

 
  市民交流広場で賑わい創出

  ジョルノビル建替えなど再開発も視野に

■それでは、具体的に玄関口となる堺東駅周辺地域の事業についてお聞きします。

「堺東駅周辺では、賑わいと風格のあるまちの顔づくりとして、市民交流広場整備事業、ジョルノビル建替え、市民会館の建替え、堺東駅前ペデストリアンデッキの改修・再整備、堺地方合同庁舎整備事業、南海高野線連続立体交差事業などを計画しています」

■市民交流広場について詳しく。

「市民交流広場は、自由と自治の象徴として整備するものです。現在の市役所前広場をこれまで以上に市民の皆さんに親しまれ、まちの賑わいを生み出す広場とするために、隣接する堺地方合同庁舎前の国有地も活用して整備する方針です。平日にも自然と人が集まって広場を利用してもらうために、できる限り柔軟に運用し、使いやすい広場となるよう考えています。市では基盤整備的な部分を支援し、民間活力を導入した管理運営を目指しています。国有地の活用については、堺地方合同庁舎北側の敷地を取得し、これと市役所前を一体的に活用すればオープンスペースはかなり広く確保できます。私は、そこでオープンカフェの実施、特色のある物産展、野外ステージなどを行えば、多くの人々が集まり、市民が憩える場所を提供できると考えています。中心市街地活性化協議会の取り組みも商店街とも連携したものになるように考えています。いま大浜少女歌劇団を復活させるために吉本興業にも協力を得ています。そういった発表の場としても、今後は市民交流広場が幅広く利用できるのではないかと思っています。スケジュールは、平成25年度に基本設計業務の実施、26年度は堺地方合同庁舎前の土地取得や整備工事、27年度から28年度に市役所前の整備工事を実施する予定です」

■人が集まり、商業の活性化にもつながるというわけですね。市民会館やジョルノビル建替えなど、再開発事業についてはどのように考えておられますか。

「市民会館の建替えに関しては、皆さんからできるだけ早く、休館を短くという要望をいただいています。市民会館も100億円を超す事業になります。計画では、平成26年度から5年間の間に現地建替えを行い、平成31年度には開館したいと、いま鋭意努力しているところです。課題はアクセスをどう確保するかということですね。ジョルノビルについては、全国でもあまり事例がない再々開発になります。堺東駅の東側に、マンションが建設されましたが、計画よりもかなり階数を減らされました。私の再開発の考え方は、中心市街地の容積率をアップし高層建物にすること。高層化すれば玄関口としての見栄えもよく、固定資産税もあがります。熊本市などは、堺市よりも人口が少ないのにも関わらず、駅前を見た時の印象は堺東駅と比べかなり違いますね」

■確かに堺東駅前の商店街は少し活気に乏しい感じがします。

「私は、商店街一角すべてを対象に再開発しなければならないと考えています。民間から出された再開発計画をみますと、あまりにも規模が小さい。再開発と言っていますがビルの建替えのような気がしてなりません。それこそ阿倍野再開発事業のような大規模な再開発を実施しないと。また、堺の主要駅である堺東駅前はロータリーが狭いのも大きな課題です」

■ジョルノビル建替えが大きなウエートを占めている。

「そうですね。ジヨルノビル建替え事業では、昨年10月に再開発会社も設立されました。先に再開発されたのが昭和56年で、新耐震基準以前のものでした。再々開発では、下層階がショッピング街、上層階がマンションで構成されると聞いています。堺東駅前ペデストリアンデッキとも一体的に整備しますと、かなり玄関口にふさわしい姿になるものと思います。また、市役所の地下の駐車場は公用車と市民用がありますが、いま入り乱れていますから、公用車の駐車場は一カ所に集約し、市民用は別に駐車場を建設すればよいと思っています」

■一方、堺駅周辺地域の整備について。

「海側では、将来的に武道館を併設した大浜公園体育館の建替えが計画されています。旧港の整備については、港湾管理者の大阪府が護岸整備を行っています。堺市が保有している土地もあり、そこは市が民間に土地を貸し付けてイルカとふれあうプールなどの整備を考えており、民間事業者もすでに決まっています。しかし、いま全力投球しなければならないのは、やはり堺東駅周辺の都心のまちづくりになりますね」

■交通網整備も併せて実施されるのですね。

「堺は南北方向に比べて東西方向の交通機能が弱いのが実情です。堺東駅周辺では、交通結節点としての機能を強化するため、南海高野線の連続立体交差化事業を盛り込んでいます。また、LRTも検討されてきましたが、個人的には反対しています。堺東駅から堺駅までの交通手段が全くないわけではない。LRTがバスやシャトルバスと同じ効果であれば、LRTに大きな投資をしなくてもいいと思っています。東西交通軸については、大阪中央環状線、大小路線、堺大和高田線の道路の3ルートについてそれぞれの路線の特性や機能、路面公共交通を導入する際の課題整理を行い、事業性について検討していかなくてはならないと思います。路面電車の利用促進として、私は南宗寺の南側の一角を買収し、町家ふうの家を建設して市が賃貸すれば、路面電車の利用客がもっと増えると考えています。そこから一つのラインができ、南宗寺から歩いて仁徳天皇陵古墳までいけるというルートづくりも必要ではないかと思います。町家ふうで土産店も増えれば、まちも活性化すると思いますね」

■仁徳天皇陵古墳は世界遺産登録を目指しておられる。

「はい。昨年11月には国の文化審議会を経て国史跡に大阪府内から百舌鳥古墳群が選ばれました。従来は古墳群を構成する古墳のうち七基が史跡指定されていましたが、新たに10基が指定され17基を1つのグループとして再編成されました。私は、これによって百舌鳥古墳群の世界遺産登録の機運がさらに高まると期待しています」



Copyright (C) NIKKAN KENSETSU SHINBUNSHA. All Rights Reserved.
当サイトを利用した結果に関するトラブルなどに関しては、当社としては一切責任をとりかねます。