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大阪府住宅まちづくり部 佐野裕俊部長  【平成26年01月20日掲載】

来年度は発注増加の見込み

まちづくりの流れが好転


 昨年4月の開業以来、賑わいを見せるグランフロント大阪。これに続くうめきた2期区域開発でも海外を含め多数の事業者が興味を示すなど、大阪のまちづくりが活況を呈してきた。大阪府住宅まちづくり部の佐野裕俊部長は、「まちづくりの流れが変わってきた」と手応えを感じながら昨年を振り返る。しかしながら、防災・減災対策をはじめ住宅整備、府内建設業の振興など、多くの課題が山積する中、佐野部長に同部における今後の取り組みを聞いた。

 (渡辺真也)
 

■まずはこれまでの今年度の取り組みを振り返っての感想から。

 昨年は、東京オリンピックの開催決定など、明るい話題もあり、建設業界の雰囲気も良くなってきた感じはいたします。大阪のまちづくりに関しても良い方向に動いているとの手応えは感じられます。府が誘致を進めているりんくうタウンや彩都等でも企業の立地が進んできました。また、グランドデザイン大阪も動き始め、うめきた2期区域の開発提案募集でも多くの企業やグループからの応募があるなど、これまで手掛けてきたことが実を結びだしたように思います。これら良い流れを確実なものとしながら次へ進めていくことで、職員も含めて全員が前を向いて動き出しているように感じます。

■今年度は、国の大型補正もあり公共工事での増加が期待されています。

 工事発注については、今年度は量的にはあまり出ておりません。これは24年度予算で国費が投入されなかったことから予算が不足し、発注を止めておりました。その後、補正予算が入ってきましたが、今度は設計が間に合わず現在は工事発注が遅れている状態となっております。一部の工事については2月議会にかけますが、補正分の工事が出てくるのは5月議会からで、このため来年度は工事の発注量が増加する見込みです。現在、発注部局が非常に忙しくなっています。

■来年度の予算や事業の見通しについては。

 来年度予算に関しては現在、予算要求中ではありますが、防災と減災対策を中心におき、特に耐震対策や密集市街地整備を重点的に実施する予定でおります。安全に関しては知事からも特に指示を受けております。中でも南海トラフ巨大地震の津波対策として水門の強化、地震に対する備えとしての密集市街地整備を挙げております。

■なるほど。

 まちづくりに関しては、泉北ニュータウンの再生に向け、各種の動きも出てきていることから、それらを取り入れた施策を考えております。また、先程も申しましたが、りんくうタウンでは国際医療に関しての企業の立地も進展しつつあるほか、クールジャパンの取り組みについても具体化しつつあります。

■耐震関係では、まちまるごと耐震化や昨年には耐震戦略プランの見直しが行われなど、住民との協働による取り組みを進めておられますが。

 件数的にはまだまだ少ない状況です。しかし、地震の発生率も高くなってきており、国でも様々な支援方策を打ち出しております。昨年には耐震改修促進に関する法律が改正され、これまで対策が課せられていなかった民間の戸建て住宅についても耐震診断の努力義務が課せられ、沿道建築物は義務化されました。これらを推進する上での費用補助などを行っておりますが、来年度にはその増額も含めて予算要求を行っております。

■ところで建設業界では現在、社会保険加入等の取り組みや人材確保が課題となっております。

 許可部局での保険の加入指導等に加え、昨年11月からは保険未加入企業は工事落札候補から除外するとの取り組みを開始しております。今後も建設業が発展し継続していくためには、やはり若い人が建設業に入ることが必要で、そのためにも各企業がきっちりと受け入れ体制を整えることは必要です。3K等と言われておりますが、労働環境を整備しないと他の産業に流れていってしまう。建設業のおもしろさというのはものづくりにあります。自分が作ったものが残っていく、そういったことに携わることのおもしろさです。

■ものづくりに関しては、専門工事団体が学生を対象とした出前講座を実施するなどの取り組みを進めています。

 やはりそういったことはいきなり分かるものではなく、学生時代から体験する必要はありますね。現在では、建築系の工科高校でも生徒が建設業に就職しなくなっている。このため府でも業界団体と協力して現場見学会等を定期的に実施しておりますが、こうした建築教育は重要なことだと思います。住まい方等のいわゆる住教育等はこれまでにもありましたが、建設業そのものを理解する、あるいはアピールすることも必要ではないかと思います。国土強靱化法もできたこともあり、今後ますます建設業の重要性や必要性、それに携わることの意義を広く理解してもらいたいです。社会保険加入もその一つであると思っておりますし、今後も府として支援してまいります。

■まちづくり、業界発展にご尽力下さい。ありがとうございました。



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