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近畿地方整備局 小俣篤企画部長  【平成26年07月28日掲載】

担い手確保へ

社会保険未加入対策を強化


 社会保険未加入対策の取り組みとして国土交通省では、8月から直轄工事での取り組みを強化することとしている。元請業者と一次下請業者については未加入業者を完全排除するとともに、ペナルティー措置も課せられることとしている。これら取り組みにあたり、近畿地方整備局の小俣篤・企画部長に、発注行政の立場から、同局管内における今後の取り組みについて語ってもらった。

 (渡辺真也)

■8月から、直轄工事において社会保険未加入対策の取り組みが強化されますが、その中ではいわゆる労働3保険全ての加入を求めていくことになるわけですか。

 加入を求めているのは健康保険と、厚生年金保険、雇用保険で、今回の取り組みとしては、この3保険を対象としております。もともとこの取り組みは、技能労働者の方々が、一般の会社員と同じような労働環境の中で働けることを目指しているもので、担い手確保全体においても重要な課題だと考えております。社会保険加入は、その中での基本的な課題と考えています。

■現在、加入業者と未加入業者が混在している状況ですが、取り組みでのそれらチェックはどのように。

 元請や専門工事業を問わず、加入義務のある建設業者、法人企業ですが、まずは会社として加入しているかどうか、ここをしっかりと確認していくことが今回の主旨です。個々の労働者につきましては、小規模な会社に所属している場合もあり、除外するわけではありませんが、当面は企業単位でのチェックが中心になります。

 企業単位でのチェック中心

 制裁金などのペナルティーも

■今回の具体的な取り組みを。

 元請と、下請代金の総額が3千万円以上(建築一式工事は4千5百万円以上)の工事における一次下請業者に限っての取り組みとしております。当初契約でこの金額を下回っていても、契約変更等により金額が増えた場合、それぞれの金額を上回った時点で取り組みの適用対象となります。また、元請が保険未加入の一次下請業者と契約したことが発覚した場合の措置として、元請に対して、その未加入の一次下請業者との契約額の10%が制裁金として徴収されるとともに、指名停止や工事成績点の減点等のペナルティーが課せられることになります。

■未加入の二次以下の下請業者の扱いについては。

 我々として直接的に把握できるのは一次下請業者までですが、だからといって二次以下の下請業者を未加入のままにしておくことはできません。二次以下の業者については、近畿整備局では建政部の所管となりますが、そこで未加入業者に対して加入への指導、要請を行っていくことになります。ただ、この取り組みは担い手の確保という大きな目的がありますから、発注者はもとより元請から下請、技能労働者も含めた建設業全体がその目的に向かっていくことが必要となります。今後としては、平成27年度からは競争入札参加資格登録から保険加入業者に限定することとしております。

■課題の一つにこれらの取り組みを府県や市町村へどのように波及させるかがあります。

 地方公共団体等に対しては5月に本省から通達が出されるとともに、各地方整備局としても、それぞれ管内の公共団体等を対象とした説明会を開催しております。特に地方自治体に対しては、今回の品確法をはじめとする法改正もあり、改正に伴う取り組みを我々と一緒になってやっていこうということで、管内の各発注機関で構成する発注者協議会を通じて、社会保険未加入対策強化への取り組みも要請しており、6月に開催された協議会の幹事会でも既に呼びかけが行われております。

■民間工事への対応もポイントになっております。

 民間工事では、特に建築工事が主体となってきますが、個々の発注者にあたるわけにもいきませんから、経済団体等をはじめ、様々なところで機会を捉えては、建設業の重要性とともに雇用や技能労働者の処遇改善の必要性を説明させていただいており、その中でも社会保険未加入対策等の取り組みについて引き続き訴えてまいります。整備局として、業行政や建築行政を担当する部門とも連携して取り組んでまいります。

■社会保険加入への原資である法定福利費を確保するための標準見積書の運用も開始されてはおりますが、充分に活用されているとはいえません。

 工事発注にあたっては、法定福利費の内訳を明示した標準見積書を活用した契約や取引を元請に対して引き続き要請してまいります。我々としては、法定福利費は適正に支払われることを前提として発注しており、先程も申しましたペナルティー等の措置もそれに合わせたものです。それが支払われていないということは、発注者としても余分なお金を支払っているとの御指摘を受けることになります。我々としては、元請、下請ともに適切に処理して頂くことを前提としておりますので元請企業と下請企業が適正な関係を構築していただくよう取り組んでまいります。

■標準見積書に関しては専門工事業者側もバラバラに提出せず、足並みを揃えることも必要です。

 そのための取り組みとして、整備局でも元請や一次の下請など、それぞれの団体に対して標準見積書を活用した契約を重ねて指導してまいります。いずれにいたしましても、民間工事への対応や各企業、業種ごとにもそれぞれ課題はあると思いますが、社会保険加入を含めた様々な取り組みが今後、建設業界の中で当たり前となっていくよう、努力していく必要があります。

■ありがとうございました。

小俣篤(おまた・あつし)
 昭和59年3月東京工業大学工学部土木工学科卒業。同年4月土木研究所採用、平成11年4月中部地方建設局庄内川工事事務所長、同15年4月岐阜県基盤整備部河川課長、同18年7月河川局河川環境課河川環境保全調整官、同20年4月近畿地方整備局淀川河川事務所長、同22年4月河川局河川環境課河川保全企画室長、同23年7月水管理・国土保全局河川環境課河川保全企画室長、同25年7月近畿地方整備局河川部長、同26年7月近畿地方整備局企画部長。東京都出身、52歳。


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