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大阪建築工事金物協同組合 阪井 正理事長  【平成27年04月20日掲載】

課題は許可と社会保険

団塊引退で現場力低下も

PRや情報発信がもっと必要


 高層建築や大規模商業施設、事務所ビルまで、建築物における外装や内装を飾る建築金物だが、大阪の建築金物業界は大半が零細企業で占められおり、業界団体も全国組織がないのが現状だ。その中で独自の活動を続ける大阪建築工事金物協同組合の阪井正理事長(三重工業社長)は、大阪府建団連との連携の下、社会保険未加入対策や担い手確保等の課題に取り組んでいる。その阪井理事長に今後の取り組みについて聞いた。

■まず、社会保険加入状況を。

 組合加盟社は現在、30社となっておりますが、それぞれに大手ゼネコンや準大手の協力会社、地場企業と系列があり、従って保険加入への取り組みも足並みを揃えてとはいかない状況です。国の方策では、まずは大手ゼネコンから、次いで準大手、中堅と順次、進めていくこととしておりますが、実際にはまだまだといった感じですね。国が保険加入を打ち出した当初は、元請側も下請側も手つかずの状態でしたが、加入期限が近づいてきた現在、ようやく腰をあげてきた感はあります。

■加入が進まない要因は。

 元請の見積書には保険料である法定福利費に関する項目を製品料の中に含む形式になっているところも多く、また、専門工事業者側も仕事を取るために安値でも受ける業者もいる。特に組合員でない業者が7割以上も存在し、組合員でも当社ように自社で金物工場を所有しているところは大阪では少なく、殆どの業者は製作や施工は外注とし、自らは設計と営業だけといったところが多い。そうなると社員も少なく、保険加入についてもあまり関心がないのではと思いますね。
 特に大阪の場合、身内だけでやっている零細企業が多数を占めており、協力会や系列に属している企業が少ない状況です。大手の協力会や系列企業であれば、上からの指導があり、組合員の場合は組合を通して情報提供も可能となりますが、もともと大阪は組合員以外の業者の方が多く、このため保険加入がなかなか進まないこともあります。

■現場職人の直用は難しい面もある。

 内勤や工場勤務と違い現場は日々変わっていく。早朝から出る時もあれば、夜間に作業する場合もある。全く違う勤務形態のものを賃金体系を平準化することには無理があったことから、当社では現場施工は外注に切り替えました。異なった職種を一律に均すことは難しい。社会保険の加入が進まないのは、そういったことも一因にあるのではと思います。

■社会保険加入は技能労働者の処遇改善の一環であり、人材確保の点からも推進されておりますが、その人材不足に関して。

 技能者不足については、他業種と同様に、こちらの業種でも課題となっております。当社の場合は、会社規模に応じた仕事量を心掛けております。安定した雇用を継続するためには人をむやみに増やすわけにもいかず、ピーク時には人手が不足することもありますが、そこをやりくりしながら乗り切っていますが、なかなか思うとおりにはいきませんね。
 また、現場施工については、今は外注としておりますが、近年では、その現場のレベルが低下してきています。その要因の一つは団塊の世代の技能者がいなくなってきたことです。この世代の人は、その前の世代から仕事のイロハから慣習までを教わってきましたが、コンピュータ等の発達により効率を求めだしてきたことから、技術や技能がおろそかになってきた。さらに、40代後半から50代までの、最も現場のことを知り尽くしている職人がいなくなってきました。

■現在における組合として課題は。

 最大の課題は許可と社会保険です。社会保険については加入期限も迫ってきており、元請からの書類も変更され、加入状況の問い合わせも増えてきました。許可に関しては、建築金物が建設業法に定める28業種にはなく、内装仕上げや構造物で許可を受けることになっています。しかし、業務内容と適合せず、いろいろと不都合も生じてきていることから、近畿地方整備局と建団連の意見交換会を通じて訴えてはおりますが、なかなか理解してもらえないのが実情で、そこが組合としての課題でもあります。
 本来であれば、上部団体となる全国組織を通じて国土交通省本省に直接要望できればいいんですが、建築金物には上部組織がなく、各地方の組合がそれぞれ活動している状況です。業法改正は困難であることは理解しておりますが、組合として業界としては声を上げ続けていくことが重要であり、その意味でも建団連の存在はありがたいと感じています。

■全国組織である上部団体がない。

 かつて、東京に全国組織がありましたが、東京の主立った業者が軒並み潰れてしまったことから、組織が持たなくなり解散してしまいました。東京での現場規模が大きくなったことが一つの要因です。特に10年程前の再開発ラッシュの時期は、建物の規模でも大阪の倍はありました。それに伴って人や設備に係るコストが膨らんだことがあります。この業種では結構、コスト管理が甘いところが多く、工事金額が大きくなればリスクも大きくなり、その辺で躓いた部分もあったでしょうね。しかし許可については、日本金属工事業協同組合と大阪建築金物協同組合と連携してやっていこうかと考えております。

■行政や発注者に対して実情を伝えるには、企業単独より業界の総意として声を上げていくことは重要です。

 組合の意義はそこにあります。業界の課題や問題を要望として挙げることもできるし、また発注者の情報や通達を組合を介して伝えることもできる。その辺が組合としてのメリットです。現在、組合としては三つの委員会を中心に運営しておりますが、PRすることは重要で、組合自身が外に向ってものを言う、情報発信をしていく必要があります

■建築金物の魅力とは。

 階段手摺や外装パネルなどがありますが、建築金物はその建物の顔とでも言うべき部分を扱っている。実際、話題になる建物も多く手掛けており、目に見えるものであり、社員でも竣工後に見に行くことがあります。そういった部分での魅力があり、そのことを若い人にももっと知ってほしいと思いますね。

■ありがとうございました。



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