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大阪府住宅まちづくり部 越智正一公共建築室長  【平成27年04月27日掲載】

府有建築物 耐震化率目標(90%)達成へ

信頼される組織へ絶え間なく改革を


 大阪府が所有する建築物の維持管理をはじめ、老朽化した建物や設備の建替・更新、さらに省エネルギー対策まで、各分野の技術者集団である大阪府住宅まちづくり部公共建築室。それら建築エキスパートのトップとして、今年四月に就任した越智正一室長は、これら建築エキスパート府民ニーズを把握して各施策に反映させながら、「信頼される組織として改革を進めていきたい」と語る。その越智室長に、就任にあたっての抱負や今後の事業展開について聞いた。

 「公共建築では様々な行政サービスが展開され、建築物の質が直接サービスに影響する。建築だけでなく福祉や教育といった幅広い分野での知識が求められるだけに、総合的な技術力向上に取り組んでいきたい」と抱負を語る。公共建築部門は25年ぶりで2回目の担当だが、今回はトップとしての就任で「153名の組織を率いる重責に身の引き締まる思い」とする。

 かつての上司の教えである「良い物をつくり、信頼される組織に」との基本的な考え方は変わらないとしながら、建築物に求められる安全や安心、省資源や省エネルギー、入札契約制度については、「以前に比べ大きく変化している」。このため「現場の状況や府民が我々に何を求めているか、そういったニーズを的確に捉え、把握しながら絶え間なく改革を進めていきたい」と今後の取り組みを述べる。

 具体的な取り組みのうち、安全・安心に関しては建築物の耐震化を挙げる。府が策定した府有建築物耐震化10カ年計画で今年度は最終年度にあたるが、現在の耐震化率が約85%となっていることから「ラストスパートに向けて気を引きしめて取り組みを進めていきます」とし、特に耐震性の低い重要な建物については全て着手していることから、「目標である耐震化率90%は達成する見込み」で、今後はそれ以後の取り組みについて検討するとした。

 省エネでは、従来から進めているESCO事業で、今年2月には新大阪府ESCOアクションプランが策定され、今年度からは同プランに基づいた取り組みを推進する。「同プランでは、82施設を対象に年間の光熱水費で約60億円の削減を見込んでおります。今年度は中河内救急救命センターをはじめ高校や警察署、府民センターでの提案公募を予定しております」と意欲を見せる。

 また、府有施設だけでなく、府内市町村や民間施設にもESCO事業を広めていくため、建物の省エネ率を簡易に判断することができる建物省エネ度判定制度を今年度に創設する予定。さらに、従来から取り組んできた省エネ提案型総合評価入札もAランクでの新築一般工事において引き続き実施。これまで北河内地域支援学校や福島と豊中の各警察署で実施しており、今年度も警察署の新築案件での採用を予定している。

 このほか、太陽光パネルの府有建築物屋根貸しについても引き続き公募を行う予定だが、売電の買取価格の低下に伴い、民間事業者の参加意欲も低下していることから、「府が定めた標準基礎工法以外でもVE提案で受け付ける方向で検討を進めていきます」とインセンティブを付与する考えを示した。

 さらに福祉関係では、府営住宅において中層棟住宅でのエレベーター設置を推進する。設置にあたっては、団地別の実施計画に基づくものとなり、今年度は50基を予定しているが、次年度以降は「特段のスピードアップが必要」とする。工事の実施にあたっては、住民や地域への説明はもとより「建設業界の協力が不可欠」とし、このため、意見交換等を通して協力を呼びかけていくこととした。

 これら事業施策以外にも、「ベテランの技術職員の退職による技術の伝承も大きな課題だ」と指摘する一方で、設計から施工、工事監理までの各委託先との連携、意思疎通も重要だとした。

 このため、公共建築室の中に、設計、工事、完成までの一連の流れについて、現場の状況を見通して業務を支援する専任のチームによるマネジメントを実施する体制を構築。

 工事の各工程において工事の障害になりそうな要因を抽出し、それら課題を公共建築室全体で共有して解決を図っていくもので、中堅職員を中心とした四人編成のチーム構成とし、「このチームが上手く機能するように持って行きたい」とする。

 モットーは、「和を以て貴しとなす」。職場はもとより関係先と単に協調するだけでなく、個人と個人、組織と組織、それぞれに考え方の違いは当然にあるが、自らの考えを述べながら相手の考えも聞き、議論を尽くし 「お互いに納得した上での関係を築くこと」で、就任にあたっても議論することを職員に呼びかけたとする。

 府庁に入庁以来、住宅政策や府営住宅、密集市街地、ニュータウンのまちづくりなど、主に計画面の業務に携わってきた。印象に残る仕事として、府営住宅建替事業で計画を変更してPFIを導入した際、 「事業当初とから余剰地を創出するため、多くの住民に仮移転をして頂く必要が生じた。粘り強く説明と協議を重ねて理解を得たこと」を挙げる。

 これまでフルマラソンを3回完走。大学時代の山登りのトレーニングで始めたジョギングが昂じたもので、休日は10キロ度を走り込む。大阪府における公共建築のトップランナーとして期待したい。大阪府出身。53歳。 

 
 越智正一(おち・まさかず) 
 昭和59年3月京都大学工学部卒業、同年4月大阪府入庁、同59年住宅政策課、同62年営繕室、平成2年東京事務所(建設省)、同3年住宅建設課、同6年住宅政策課主査、同10年宅地室計画係長、同14年都市整備推進課補佐、同17年住宅経営室住宅整備課補佐、同19年大阪府住宅供給公社経営企画課参事、同23年住宅まちづくり部居住企画課長、同26年同都市空間創造室長を経て現職に。大阪府出身。53歳。


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