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大阪府警備業協会 若林清会長  【平成27年05月11日掲載】

交通誘導員の社保加入が課題

警備員の待遇改善 標準見積書活用促す


 道路工事をはじめ、建設現場での交通誘導業務を担う警備業界でも、近年は警備員の高齢化が目立ち、若年者の取り込みが課題となっている。この状況の中、大阪府警備業協会では、若林清会長(株式会社 武警 代表取締役)の下、社会保険未加入対策をはじめ警備員の処遇改善を目指した取り組みを進めている。「セカンドポリスと位置付けされる警備員の地位が低すぎる」とする若林会長に、警備業界の現状と今後の取り組みについて聞いた。

■まず、警備業界の現状から。

 初めに警備業の業務内容から申しますと、警備業務は1号業務から4号業務に分かれており、1号業務は施設警備で、警備システムによる機械警備や販売店等で私服によるマーケット保安、施設の巡回警備等がこれに該当します。2号業務が建設現場等の警備で、交通誘導や雑踏警備があり、この2つが業界全体で半々の割合を占めており、当協会でも会員510社のうち、1号業務と2号業務を手掛ける会員が、それぞれ半分程度となっています。
 かつては全ての業務を手掛けることが可能でしたが、現在は業務別の届出が必要となった上、それぞれの業務に「指導教育責任者」の資格を有する者がいないと警備を行うことができなくなりました。警備員教育が法律で義務付けられており、指導する資格者がいないとその業務を請け負えない。警備員を採用した場合、まず3日間の新任教育を受けることが義務付けられており、新任教育を受けずに現場へ派遣すれば警備業法違反になります。

■各種の規制、制約がある。

 この指導教育責任者資格は国家公安委員会が認定する国家資格で、さらに最近では道路の工事現場等で資格者の配置が求められております。幹線道路沿いの現場で車道に入って交通誘導をする場合、交通誘導検定資格を取得している者でなければならなくなりました。交通誘導員の死亡事故増加に伴い、検定資格制度が創設され資格者の配置が法的に義務付けられたことによります。
 これ以外にも警備会社に対しては毎年、警察による立入調査が実施されており、名簿から勤務表、教育実施表や指導計画等の資料を提出することになっています。外部から見れば、誰でも直ぐに警備員になれると思っておられるでしょうが、意外と厳しいものがあります。

■社会保険未加入対策をはじめ現在の課題としては。

 警備員の労働環境の整備が必要ですね。警備員に対する待遇が現状では悪すぎる。特に建設現場での警備は仕事が過酷で危険を伴っている上、高齢の警備員が多いため、長期勤務ができず昇級も見込めない状況です。特に大阪は他府県と比べ単価が低い。現在では、単価が上昇する気配にありますが、これは人手不足によるものです。指導教育責任者等の有資格者に対しては、現場勤務で手当が付くほか、給与でも資格者手当が付きます。ただ、その手当分の上乗せに関しては、面倒を見てくれる元請とそうでない元請もあり、その辺は交渉が必要にはなっています。
 また、大阪の場合は会社数が多く、協会員も含めた警備会社は約1200社あります。会員会社が抱える警備員はだいたい20〜30人程度の規模ですが、10人以下ところもあり、警備部門のある大手企業でも警備員が少ないところもある。さらに2〜3人の警備員を引き連れて事業主自らが先頭に立ち、あちこちの現場を回っているところもあると聞いております。

■業者数が多いことから過当競争による叩き合いが起こる。

 単価が上がらない原因の1つにはそれがあります。叩き合いによりその日暮らし的な経営に陥っているところもあり、これでは企業として育っていくはずがない。全国大手の会社は1号業務に特化し、警備員も正規雇用で定期採用も実施しており、これは現金輸送警備の3号業務も同様です。これらに比べ2号業務の警備会社は厳しい状況にある。そういった観点から社会保険未加入問題は、特に2号業務における課題となっているのが現状です。

■警備会社自体がゼネコンの協力会社として所属している場合もある。

 それぞれに得意先がありますが、協力会社としての組織には所属しておりません。このため、社会保険に関しても要請はしにくい状況にあります。ただ、日本道路建設業協会関西支部の支部長さんには協会理事をお願いしていたことから、理事会を通して警備業界の実情は理解していただいていると思います。
 社会保険未加入対策に関しては、全国警備業協会が法定福利費も含めた警備料金標準見積書を作成し、それに基づき契約することとしております。標準見積書の作成にあたっては、公正取引委員会と協会が事前に協議し、法的にも認められたものです。この見積書の活用に関しては、今年度から主要ゼネコンに対しては働きかけていく予定です。
 ただ、年金に関してはこれまで加入していない人も多く、その殆どは60歳以上で、今から加入しても受け取れないということがネックになっている。社会保険料についても、ただでさえ少ない手取りが減ることをいやがる者もいる。

■保険加入は法定福利費の確保はもとより労務単価自体のアップも必要ですね。

 労務単価に関しては、新規取引の場合は単価を上げており、先程言いました単価の上昇はそういったことによるものです。しかしながら、現場では風雨にさらされ、寒暖に耐え、更衣室やトイレもままならないこともあるにも係わらず賃金が低い。これら現状を踏まえた場合、どうしても労務単価アップが必要で、協会としても会員に保険加入に対する標準見積書の活用を促すとともに、府内の建設業団体等に対して要望を行っていきますが、やはり各企業が努力していかなければ労務単価は上がっていきません。

■今後の警備業界としての方向性は。

 かつてのように警備員を配置するだけといったような状況にはなく、資格を持つことが義務付けられるなど、安全については、我々警備業が担っている部分は大きなものがあります。現在、警備業は警察の補完組織としての役割を担っている部分もあり、社会全体の安全、安心を担う産業でもあります。
 また、警察白書の中でも、警備業はセカンドポリスとして位置付けられておりますが、業務内容に比べ警備員自体の地位が低すぎる。若い人を迎えるためにもいかにして誇りを持てる仕事にしていくかといったことを考えていく要はありますね。

■ありがとうございました。



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