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竹山修身・堺市長  【平成29年01月05日掲載】

わくわくする堺へ

歴史と文化を誇るまちづくり


 泉州地域に位置する政令指定都市・堺市の竹山修身市長は、仁徳天皇陵をはじめとする古墳群等の歴史資産、南蛮貿易により育まれてきた文化を活かした観光拠点の形成を目指す一方で、市民の憩いの場となる広場や芸術文化施設の整備、定住魅力を高める公園再整備事業等を推進。また、安全・安心のまちづくりとともに、高齢化社会を見据えた施策を展開しながら、それらの担い手である建設業の育成・振興にも力を注いでいる。その竹山市長に、堺市のまちづくりの方向性等を聞いた。

堺東に人が集まれる憩の場

さまざまなスポーツ施設でも魅力発信
市民交流広場整備

■初めに、堺市におけるまちづくりからお聞かせ下さい。

 まちづくりに関しては現在、市役所前にある市民交流広場の整備を推進しています。将来は市役所前と合同庁舎前に分散している市民交流広場を一体的に再整備するもので、再整備にあたっては、若い世代から高齢の方々まで各種のイベントが楽しめるよう計画しています。若者であればライブなどを、お年寄りにはお茶でも飲みながらホッコリとしていただくといった、堺東に人が集まれる憩いの場所となる賑わいの空間づくりをめざしています。具体的には、市役所高層館前に、演劇やコンサートの上演を可能とする庇を設けた小規模な舞台を設置する計画もあり、いろんな方々に利用していただこうと考えています。

■近隣の商業施設でも、広場の再整備に併せて建替えが行われております。

 ショッピングセンターを併設した住宅施設として計画されており、当市としても堺東に人が集まってもらえる地区とする上においても、こういった民間事業者の方が民間開発を行うことは、まちづくりの大きな起爆剤になると思います。また、堺市民芸術文化ホールも平成31年の開館を目指して工事を進めています。芸文ホールにつきましては、堺市のみならず、堺市以南の文化の殿堂として、音楽や演劇等を楽しめる場として整備します。
 一口に文化といってもいろいろありますが、市としては文楽や落語等の古典文化も大事だと思っています。これまでに桂米朝さんの一門が落語会を開催されており、今後も継続して開催していただけるよう努めていきます。
 そのための課題は、堺東駅から市民交流広場、芸文ホールに至る道筋を通る人達が、ワクワクし、ドキドキしながら通っていけるように整備するかです。ホールからの帰り道にお茶を飲んだり、食事したり、ナイトライフを楽しめるような仕掛けづくりを民間事業者とともにつくっていこうと計画しています。

■堺市全体の取組みとしては。

 堺市はこれまで、大和川を挟んで大阪市の衛星都市的に位置付けられる側面もありました。特に泉北ニュータウンや金岡団地等は利便性も良くベッドタウンとして発展してまいりましたが、現在ではまちとしての成熟化が進み、住民の方々にとっては「わが町」としての意識が強くなってきています。
 いわゆる、定時制市民であったものが全日制市民となった。それまで他市に通勤していた方々が、定年や退職を機に地域に戻り、そこで健康のためのクラブやサークルをつくったり、高齢者をサポートする活動を行ったりする取組みが活発になってきています。その中で泉北ニュータウンでは、若い人からお年寄りまでが一緒になった取組みをめざしてニュータウン再生事業を進めております。
 また、栂・美木多駅前では大型ショッピングセンターの建替えが計画されているほか、原山公園の再整備運営事業をPFI手法で進めています。民間事業者のノウハウによる設計、建設から維持管理及び運営までを一体的に行うことで、質の高い公共サービスを提供します。計画では、屋内や屋外プール等を整備して公園全体の活性化を図ることとしています。

近大医学部の移転

■近畿大学医学部の移転等も大きな起爆剤になりますね。

 近大の移転により現在の泉ヶ丘プールを撤去することになりますから、移転先の原山公園の整備では、泉北で子供たちやお年寄りが年間を通じて楽しむことができるようにと考えています。
 原池公園の再整備では、プロ野球ファーム戦や高校野球の地方大会予選にも使用できる規模の野球場を整備します。また、同公園には、西日本最大級のスケートボードパークがあり、プロのスケートボーダーの練習にも使用されています。
 また、臨海部にはサッカー場として16面のフィールドを備えたJグリーン堺がありますが、ここを2020年の東京オリンピックのサッカー、その前年のラグビーワールドカップの出場チームのキャンプ地として立候補しようかと考えています。特にラグビーでは、当市とニュージーランドのウェリントン市が姉妹都市であり、同国の代表チームであるオールブラックスのキャンプ地として誘致を働きかけているところです。
 このほか、バレーボールでは堺を本拠地とする堺ブレイザーズもあり、大浜体育館を建替え、アリーナをV・プレミアムリーグで利用してもらうとともに、武道館を併設することも計画しています。

■なるほど。

 また、2021年にはシニアのオリンピックと言われる関西ワールドマスターズが開催されます。大会には選手や関係者で約6000人、その家族を含め1万人以上の方々が堺を訪れるとされています。しかし、堺市だけでは、それだけの宿泊者を受け入れることができないため、泉州地域の9市4町で、既存の宿泊施設などを活用し、泉州全体で一体となって取り組み、そして関係者に泉州全体の魅力を満喫してもらおうと考えています。
 私としては、都市のプロモーションというのは非常に大事なことだと思っています。外部に向けて都市をいかに発信していくか。堺市の場合、歴史や文化といった核がありますが、スポーツも大きな発信のツールでもあります。
 堺市の成り立ちは南蛮貿易により海から栄えたもので、海が故郷とも言えます。そういった意味から先程の大浜体育館の建替整備をはじめ、大浜北町市有地において商業施設の誘致や賑わいを創出するため、プロポーザルの実施を予定しています。また、大阪府が計画している堺旧港全体の遊歩道整備事業と連携し、乙姫像や日本最古の木造灯台の景観を活かした憩いの場をつくります。

欧米の観光客もターゲットに

防災は自助、共助、センター整備
観光資源を活かす

■文化や芸術、景観も含め堺市には観光資源が結構ありますね。

 ええ、そういった意味でのポテンシャルには高いものがあります。また仁徳天皇陵を中心とした百舌鳥古市古墳群を世界遺産として、海から堺に入り、仁徳天皇陵から古市に至るコースとし、そこから京都や奈良に向かうといったゴールデンルートを確立できればと。現在、関西広域連合では、関空を起点に関西全域の文化や歴史遺産等を結んだ「美の伝説」と銘打った関西広域観光周遊ルートを打ち出していますが、まさにその中心付近が堺となっています。
 言わば、関空イン・関空アウトで、そこのインバウンドをしっかりと堺で受け入れる必要があります。当市では、堺が生んだ茶聖・千利休や情熱の歌人といわれた与謝野晶子の生涯や人物像等を通じて堺の歴史・文化の魅力を発信する文化観光施設「さかい利晶の杜」を整備して受入体制を整えており、特に利晶の杜では茶道体験ができ、これまで70万人が来場しており、今後はこれらをもっとピーアールしていきます。
 要は、いかにリピーターを呼び込むかで、そのためには堺が持つ観光資源をいかに発信していくか。歴史や文化に加え、食品や名産品、自然、それらを体験してもらうためにも泉州の九市四町で連携して取り組む必要があり、それを牽引するのが堺の役割であり、そのため観光を推進する機関であるDMOを立ち上げる構想もあります。インバウンドをいかに取り込むかですね。
 このため東アジアだけでなく、欧米の観光客をターゲットにしたい。熊野古道では欧米からの観光客も多い。欧米には歴史に興味を持つ人も多く、そのような人を百舌鳥・古市古墳群から熊野古道へと誘う。そういった点で泉州地域は奈良や和歌山との連携も必要ではと思います。

■話は変わりますがLRTに関しての動きはありますか。

 高齢社会の中では高齢者の移動手段も重要となります。高齢になると徒歩での移動は困難になりがちで、そうなると公共交通機関の役割が大きくなってきます。LRTはその一つの手段であることは十分に認識しています。今後は、中期的な課題として費用対効果等を検証し、現状の道路交通への影響等を勘案しながら検討していきます。
 また公共交通の取組みとして、環境や障がい者、高齢者にやさしい低公害化と低床化の車両バスによる堺シャトルを走行させています。定時制の確保なども確認しながら、走行レーンを取り入れたBRT等の導入も考慮しなければなりません。高齢化社会を見据えて、移動の機会の提供を考えた場合、LRTやBRTも視野に入れて検討を進めていきます。

地元建設業者育成

■さて、南海トラフ地震等の自然災害に備えた防災・減災対策については。

 これも重要施策の一つです。地震対策では、幼稚園から小中学校の市有校舎等については耐震化率100%を達成しています。また引き続き橋梁の耐震工事についても実施していきます。さらに、指定避難所までの水道管と避難所からの下水管の耐震化を優先的に進めており、また、平成29年度末までに指定避難所となる全ての小学校にマンホールトイレを設置し、トイレ機能を確保する予定です。
 防災への取組みの中で、まず一番重要となるのは、自助の考えです。あらかじめ備蓄物資の用意や家具の転倒を防ぐなど、市民自らが自分の身は自分で守ること。二番目は共助で、地域が一緒になって防災活動に取り組むことで、例えば避難所の運営マニュアルの作成や、津波避難経路の確認を示す表示など、津波に強いまちづくりも重要です。それら地震や津波等の自然災害に対しても安心・安全なまちであることも、選ばれる都市の条件だと思います。
 防災に関しては、臨海部の堺2区に基幹的広域防災拠点があります。これは関西のみならず、西日本の防災拠点で、ここが支援活動はじめ、備蓄基地にもなり防災活動におけるキーステーションとなります。このほか、当市としても三宝下水処理場内に隣接して防災センターを整備しました。被災時における下水道機能の応急復旧の拠点、他都市からの支援の受け入れ、応急復旧のための資機材の保管のほか、地域の一時避難施設としての役割も果たします。

■ハード、ソフト両面からの取組みですね。

 政令市のメリットの一つに国道と市道を一体的に維持管理する権限の付与があります。国道26号のような2桁国道は国の直轄管理となりますが、309号や310号は堺市が管理している。これにより、舗装道路と未舗装道路が混在することがなく、シームレスに一定の整備が可能になり、それら道路整備を地元業者にお願いすることもできます。いわゆるハード面での地産地消で、道路整備等においては、やはり地域の事情に精通している地元業者に発注することが効率的です。
 そのためには地元業者を育成することも必要となることから、当市では優良建設業者に対する表彰を毎年、実施しています。真面目に頑張っているそれら業者を表彰することで、市としてもしっかりと評価していることを周知する意味もあります。

■現在、建設業界は若手をはじめ人材の確保育成に苦労されており、そういった面では励みにもなります。

 各業者の目に見えない努力は、我々も汲み取っていかなければなりません。また技術力の向上の上からも行政と業界が連携して取り組む必要もあります。一番重要なことは、このまちの安全と安心を建設業者の方々が担っているということ。また、賑わいを創出する施設や建物を整備するなど、まちの発展に大きな役割を果たしていることです。現在、仁徳天皇陵にガイダンス施設を整備する計画がありますが、そういった場合でも、歴史や文化を分かっている地元業者の創意工夫も必要となる部分もある。まちづくりの一端を担っている地元業者の育成はしっかりとやる必要はあります。

■今後も魅力ある堺づくりにご尽力下さい。

 
 竹山修身(たけやま・おさみ)静岡大学人文学部卒。昭和50年4月大阪府庁入庁、平成元年4月南河内郡美原町助役、同7年5月大阪府総務部人事課長、同12年4月商工部商工振興室長、同14年4月総務部行政改革室長、同17年4月府議会事務局長、同20年4月商工労働部長、同21年4月政策企画部長を経て、同21年10月から堺市長に。現在2期目。堺市出身。66歳。


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