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兵庫県建築施工管理技士会 柄谷順一郎会長  【平成29年04月03日掲載】

設計変更等への対応など

まず会員増やして発言力高める


 今年3月に設立された兵庫県建築施工管理技士会。全国では7番目、近畿では京都府に次いで2番目となった。会長に就任した柄谷順一郎・柄谷工務店社長は、建築工事分野が抱える課題解決がその役割としながら、「当面は会員数を増やし、組織としての地盤を強化したい」と抱負を語る。その柄谷会長に設立の経緯や今後の展開を聞いた。

■まずは、会長就任にあたっての抱負から。

 建築工事は、公共工事が主体の土木に比べ、約九割が民間工事に依存しております。その中には様々な問題があり、それを解決していくには、個々の努力も勿論必要ですが、建築業界としての発言力を高め、技術力も向上させる必要があります。特に、兵庫県内の業者の多くは中小企業であり、設計事務所とコミュニケーションをとる上にも問題がある。それらを解決するために、今回、建築施工管理技士会を立ち上げました。
 今後は兵庫県建設業協会のバックアップを受けながら、官民の発注者へ問題提起し、理解を求めていきます。ただ、そのためには全体の技術力向上とともに安全確保が重要となってきます。建築の場合、高所作業も多く、墜落や転落災害が発生すれば重大災害につながるため、災害防止に努め、社会に対する信頼を得ることが必要だと考えます。

■活動にあたっての取組みでは。

 一つには工事設計変更等への対応です。土木工事では、設計変更等に係る費用は清算してもらえますが、建築工事では清算出来ない場合が多くあります。これには職種が多様であり、公共建築か民間建築かの建物用途の違いもありますが、見積に係る変更や数量に増減が生じても、なかなか対応していただけず業者側が負担する状況になっています。
 また、公共工事ではある程度余裕を持った工期設定となっておりますが、民間工事では、施設のオープンに合わせた工期設定であり工期厳守が課せられています。公共工事のウエイトが高い企業では、選別受注も可能でしょうが、首都圏に比べ工事量が少ない近畿では受注競争が激しく、その中では採算を度外視して受注する場合もあります。無理な受注は従業員のやる気だけでなく技術力の低下にもつながりかねません。これらを防ぐ観点からも、技士会を通して経営者のみなら
ず現場技術者等が研鑽に励み、発注者に改善を訴えていきたいと思います。
 そのためには、まず団体としての力を付けるために会員数を増やしていくことです。現在は法人会員が53社、個人会員で363人(設立時)ですが、これを増やすことで団体としての地盤を強化して発言力を強めていくため、協会はじめ関係各者からの支援と協力をお願いしていきます。

■設立にあたっての経緯は。

 これまで問題解決にあたっては、発注者に対して協会や委員会、部会との意見交換を通して協議しておりますが、議題の殆どは土木工事が中心となっています。営繕担当者も出席しておりますが、民間工事に関しては、殆ど議題に上らないのが現状です。そういった背景の中で、3年前から兵庫県から申し入れがあり建築だけの意見交換会を行っており、これをさらに推し進めていくために技士会を設立することとしたものです。担い手三法が施行され、国土交通省でも工事に関する諸問題に対して、現場での協議を通して解決を図っていくとする体制を整備されており、タイミング的にも良い時期と考えております。

■技士に求める役割としては。

 先程も言いましたが、品質と安全の確保で、激しい競争の中で品質を確保しながらコストダウンを図り、顧客満足度をいかに充足させるかです。ただ、コストダウンと品質確保は相反する面もありますが、これをクリアするために技士同士が互いに意見や情報交換を図ってほしい。このため技士会として研修会や講習会など、協会はじめ官公庁等の協力を仰ぎながら実施し、研鑽を重ねていこうと考えています。

■当面の活動方針は。

 初年度の事業としては、積算や施工分野の意見を集約するための組織づくりと研修会等の開催が中心になりますが詳細は6月の定時総会で決定します。また、技士会として兵庫県との意見交換会を実施してまいりますが、地域によって課題も様々であることから、将来的には県内の自治体とも実施していきたいとは考えておりますが、そのためにもまずは組織を固めることで、それには会員数を増やしていくことが課題になり、会員も協会会員企業以外からも広く受け入れていきます。また、他府県の技士会や外部の情報なども取り入れながらやっていきたいと考えております。

 趣味は、たまのゴルフと読書、音楽鑑賞、英会話と多彩。読書は、「仕事のことを忘れるため」で、特に新聞小説は毎日欠かさず読む。音楽は、クラッシックからジャズまで、特にジャズはライブハウスに足を運ぶ。英会話はもっぱらラジオ講座を聴くことで「ぼけ防止のため」と笑う。尼崎市出身。80歳。

柄谷順一郎(からたに・じゅんいちろう)
 昭和35年3月甲南大学経済学部卒、同年4月柄谷工務店入社、昭和51年12月代表取締役社長。このほか関連会社の会長・社長も務める。団体活動では、現在、兵庫県建設業協会副会長兼常任理事、建災防兵庫県支部副支部長、近畿建設技能研修協会副会長など。 これまで、兵庫県知事表彰や尼崎市長表彰、平成27年11月には建設産業功労者として旭日双光章を受章している。


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