日刊建設新聞社   CO−PRESS.COM
都市再生機構西日本支社 小原啓蔵副支社長  【平成29年06月26日掲載】

公共団体への協力に意欲

地方都市再生で公園事業も進む


 「ニュータウン再生事業と都市再生事業の一部を担当しますが、関係機関が多いことと、業務も調査から企画、外部への職員派遣など多岐にわたるため、各分野から期待を寄せられ、身の引き締まる思い」と述べながら就任にあたっては、「ワークライフバランスが課題となっているため、職員が生き生きと気持ち良く、仕事と生活できる職場環境づくりへのお手伝いができれば」と抱負を語る。

 ニュータウン事業に関しては、前職でも関わっており、「ある程度の状況は把握している」。平成26年度からの中期計画では、これまでに600ヘクタール以上の土地を販売しており、これによりURが発足時に保有していた土地は10分の1以下までになり、「今後は、中期計画内での販売完了を目指していきますが、そういう意味から最終コーナーを回った感じで、ゴールが見えてきたかなと思っています」。

 現在では、彩都東部において大阪府や民間事業者と協力して事業を進め、また、その他の土地についても大阪府や地元自治体と協力して事業化を目指している。これら土地利用に関しては、高速道路隣接地等では立地特性のポテンシャルを生かしたものとするため、「住宅用地として計画していたものを物流等の企業用地に変換して利用促進を図ることも方策のひとつ」としながら、URの保有地も少なくなっているため、「そういった立地を有する公共団体から話があれば、お手伝いさせていただきます」。

 都市再生では、面整備として土地区画整理事業を手法とした事業を推進。現在、大和川左岸で土地区画整理事業による高規格堤防整備とまちづくりを進めているが、阪神高速大和川線の事業もあり、事業実施にあたっては、「これら関係機関との調整、地権者との移転協議等を進めていく上においてURに対する期待が高まっており、一つ一つ丁寧に取り組んでいきます」と意欲を見せる。

 また、地方都市再生と公園事業にも取り組んでいく。地方都市再生に関しては、「当該自治体の財政やポテンシャル等も勘案して、公園事業とすることで住民の理解も得られやすいことから、公園事業を一つのツールとして地方都市再生を進めていこうかと考えています」。 

 具体的には、奈良県宇陀市での公園整備にあたり基本設計を受託。周辺では国民休暇村の進出も決まっており、これを契機に観光にも力を入れたいとする宇陀市、奈良県とともに協議を進めている。さらに、和歌山県海南市では、臨海部にある中央公園への市役所庁舎の移転を契機とした公園拡充整備についても協議を開始するなど、事業が動き始めていることから、今年4月には業務部の中に地方再生に係る「まちづくり支援室」を設置、公共団体への支援を行っていく体制が整備された。

 一方、これら事業を推進する上でのパートナーでもある建設業界に対しては、「安全で確実な施工をお願いしたい」。土地区画整理事業における宅地整備では、土地基盤に関する基準が変更する場合も多々あり、そこをクリアするのは、技術力とものに対する考え方を培う必要があり、「それらを担う人材の育成を、我々も含めて取り組んでいきたい」と、人材育成にも努めていくとする。

 平成7年から関西支社へ、「生まれ故郷の役に立ちたい」と震災復興事業に携わり、芦屋市での土地区画整理事業を担当する。約400人の地権者や被災者を個別に訪問を行ったことが印象に残る。その中では、整備する公園一つをとっても、高齢者や子育て世代など、それぞれがイメージする公園像があり、「それらの最大公約数をどうまとめるかが重要」とし、URが実施するとしても「実際は地元や被災者が主体であり、我々はそのお手伝いである」ことを痛感した。

 また東京では首都圏本部時代、横浜のみなとみらい21地区での超高層ビル3棟を貫く通路部分を手掛けたことも、「二度と経験できないもの」と心に残っている。

 感銘を受けた言葉は「殿(しんがり)の思想」。最後尾を務める者は、全員の安全を確認する役目があり、自身も「仕事を最後まで見届けることが役目」と重ね合わせる。趣味は、時刻表を「読むこと」で、まだ見ぬ土地をイメージする。神戸市出身。

 小原啓蔵(おはら・けいぞう)昭和56年3月東京大学工学部都市工学科卒業、同年4月日本住宅公団入社、住宅・都市整備公団、都市基盤整備公団を経て、平成16年7月独立行政法人都市再生機構西日本支社大阪国際文化公園都市開発事務所事業調整課長、同17年7月彩都開発事務所事業調整課長、同18年6月関西文化学術研究都市事業本部事業部事業計画第一課長、同20年6月西日本支社ニュータウン業務ユニット業務管理チームーリーダー、同22年7月彩都開発事務所長、同24年4月西日本支社都市再生業務部次長、同26年4月ニュータウン業務部長、同29年4月西日本支社副支社長



Copyright (C) NIKKAN KENSETSU SHINBUNSHA. All Rights Reserved.
当サイトを利用した結果に関するトラブルなどに関しては、当社としては一切責任をとりかねます。