就任にあたっては、経験も少なく会社の規模も小さく非常に重責を感じている ― としながら、「協会は歴史もあり将来的にも続いていくものであり、その一時期を任されるということで、過去から積み重ねてきたものを引き継ぎ、少しで良くして次の世代に渡すことが私の責任と考えています」と抱負を語る。

　また、松田組としての協会への加入は、「私が生まれる前から」と早く、「私自身は会社に育ててもらったが、会社は協会に育てってもらった」とし、このため、「協会と会社に恩返しする意味でも全力を尽くしていく」と決意を述べた。

　活動にあたっては、前会長が掲げた、“地域が頼れる建設業協会”の精神を、「自分なりに見つめていきたい」としながらも、協会だけではなく、「それぞれの地域の会員企業とその従業員一人ひとりが基になると思っている」。

　会員企業の一人ひとりが、協会員であるという誇りを持って地域から頼りにされる人になることが重要で、それにより会員企業が地域が頼れる会社になることであり、「技術的なことはもとより、日常的に信頼される姿勢で経営にあたるといったことが重要だ」とする一方で、各企業にはそれぞれ経営方針があり、押し付けることはしないが、「機会を捉えてそれを訴えながら、協会は協会としての役割を果たすことではないかと自分なりに考えていきたい」とした。

　今後の協会活動については、会長としての職務をまだ全て把握しいないとしながら、「これまでの活動を実践し、繰り返しなりますが、より充実したものとして次の世代に引き継ぐことだと思っている」と力まずに、柔軟な姿勢で臨むとした。

　建設業が抱える喫緊の課題である働き方改革に関しては、「公共工事が先導役となり、国や府県単位ではある程度の取組みは進んでいますが、そうでない市町村もあると聞いており、特に週休２日の取組みは担い手確保の観点から重要です」と課題を指摘。

　また、長時間労働の是正に向けた労働時間の上限規制についても、「建設業は４年後からと言われていますが、今の段階から取り組んでいかなければならない」と述べ、国や県の発注工事では、工期の設定等での取組みが進められるなど、問題意識は高いとしながら、「課題は、そこまでの対応に至っていない市町村や民間工事で、順次、要望していかなければならないと考えている」としている。

　ＩＣＴ工事への対応については、「やらなければならないもの」と強調。現在、国土交通省や県ではＩＣＴ工事を拡大しつつあることから、「今後はＩＣＴ施工が普通になってくると考えている」。多くの市町村への普及はまだまだ先になるとしながら、「生産性向上や担い手確保の観点からも避けては通れないものになります」。

　担い手確保については、工業高校卒業生の入職促進はもちろんのこと、大学や専門学校をも含めて、建設系以外の学科出身者も視野に入れたいとの意向を示しながら、「魅力ある建設業とするためには、各企業が魅力ある企業になることが必要だ」と強調する。

　一方、新型コロナウィルスの影響については、公共工事の落ち込みや民間設備投資の冷え込みなど先行きに懸念を示し、また、協会が主催する各種セミナーや現場見学会等でも、「講習会等の実施が出遅れており、今後の開催にあたっては、三密回避をはじめ、感染防止対策を十分にとっていく」とし、インターシップやサマーセミナーは今年も実施する予定とした。

　経営者として、「自社で施工した建物や構造物を見たときには誇りを感じる」との思いを語る。語り口は穏やかで、休日は、語り口と同様に、静かに過ごすことが好きとする。趣味は読書と音楽鑑賞。座右の銘は、「実ほど頭を垂れる稲穂かな」。尼崎市出身。６６歳。

　松田�驕iまつだ・たかし）昭和51年９月関西学院大学法学部政治学科卒、同年11月松田組入社、平成10年７月取締役、同18年６月から代表取締役社長。兵建協会長のほか、建退共兵庫県支部長、職業訓練法人近畿建設技能研修協会会長に就任。これまで全国建設業協会長表彰（平成26年）、兵庫労働局長表彰（令和元年）、国土交通大臣表彰（令和元年）等を受賞している。