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近畿地方整備局営繕部 中山義章部長  【2024年11月11日掲載】

地域との関わり、必要機能の確保を推進

新担い手三法を踏まえ改善に取組み


 公共建築は、様々な分野にわたって地域の人々に幅広く活用され、活力ある地域づくりに貢献するものとなっている。中でも官庁施設は、公共サービスを提供するとともに、災害時は防災拠点としての役割も担っている。近畿の営繕行政を先導する近畿地方整備局営繕部の中山義章部長は、公共建築がその課せられた役割を適切に果たすため、機能の維持・更新や管理に努めている。その中山部長に管内の施設の状況や整備にあたっての取組みを聞いた。

  ICT化・DX、現場の処遇改善も

■今年6月に第3次担い手三法が公布・施行されましたが、これへの取組みと改正前との違いについてお聞かせ下さい。

 建設業の担い手三法の取組みでは、特に民間工事の割合が多い建築工事においては、公共工事だけでなく民間工事への浸透が重要だと認識しています。その上で、事業を実施している立場から申し上げますと、まずは我々が先導的役割を果たすために、直轄工事の発注にあたり各種の取組みをきっちりと推進することが重要です。
 当たり前のことですが、適正な予定価格を設定し、必要な工期をしっかりと確保して、受注者の方々が適切な休暇を確保できるようにすること、また、生産性向上技術を活用するなど、できるだけ効率的に取組みたいと思っています。
 今後、新担い手三法の趣旨を踏まえ改善を重ねつつ取り組んでいきたいと考えています。まずは、国が率先して取り組むとともに、他の発注機関に対しても意見交換会などあらゆる機会を通じて情報提供を行うほか、問い合わせ等にしっかりと対応して、地方公共団体はじめ他の公共建築工事の発注者、さらには民間建築工事へと普及していければと思っています。
 また、前回の改正でも適正に利潤が確保できるように予定価格を適正に設定することや、ダンピング対策の徹底等が規定されていますが、今回は下請企業も含めた現場の処遇改善等が求められています。我々発注者としては、適切な予定価格と工期の設定、発注時期の平準化など、業界の皆さんができるだけスムーズに工事を受注し、工事が円滑に行えるよう進めていくことが責務だと考えています。
 このような取り組みを通じて、適正な賃金が確保され若年層の入職促進につながればと思います。

■物価高騰により工事金額が上昇すれば工事数が減少するのではと懸念する動きもあり、また予定価格と実勢価格との乖離も指摘されています。

 現在、工事単価の上昇による発注取り止めはありませんが、一部の工事においては、建物本来の機能を確保しつつ、工法や仕様の変更を行うなどの工夫や努力をしながら進めています。
 予定価格については、最新の市場動向なども加味しつつ、適正な積算に努めておりますが、必要に応じて、見積活用方式や物価変動スライド条項の適切な運用等で対応しています。

■働き方改革の取組みでは。

 働き方改革への取組みは、担い手確保の上でも重要です。特に今年4月から建設業の時間外労働規制が開始されています。週休2日について国交省では、令和3年度から原則、新築工事には義務付けとし、令和4年度からは予定価格3億円以上の規模の大きい建築工事と改修工事も含めて対象とし、昨年度からは原則として全ての工事を対象としています。
 これに加え令和6年度からは月単位での週休2日を適用しています。これまでは、通期で週休2日を取得することとしておりましたが、それを月単位で取得するとしたものです。今年度、現在、発注手続き中の4件の工事に適用しております。
 月単位での週休2日を実現するための工期設定を適切に設定するとともに、今年のように猛暑日が多い場合は、猛暑による作業不能日も考慮するなど、働き方改革の質の向上につなげてまいります。

■なるほど。

 これまでの週休2日の達成状況ですが、昨年度に完成した工事4件と今年完成した1件で4週8休を達成しており、達成率は100%でした。週休2日取り組みに合わせて、適正な予定価格の設定や、物価変動におけるスライドの運用など、それらをパッケージにした営繕積算方式についても普及促進を図り、これら取組みが現場環境の改善や働き方改革につながっていけばと考えています。
 このほか、CCUSに関しては、原則、全てのWTO工事、3億円以上の建築工事、2億円以上の電気設備及びに機械設備工事をCCUS活用推奨モデル営繕工事としており、今年度は契約済み2件を含め4件の工事に適用します。本省の方針も含めてしっかりと取り組んでいきます。

■工事のICT化やDX等による生産性向上も課題です。

 工事おける生産性向上ということでは、これまでに情報共有システムの適用や遠隔臨場は既に全ての工事で実施しています。遠隔臨場では工場検査での活用はじめ、WEBカメラによる受発注者と設計者が一緒に現場確認を行うなど、現時点で7件の工事に適用しています。
 BIMについては、今年度は新営設計業務2件、昨年度発注の業務2件の、計4件で活用しており、設計施工一貫での活用を目指しています。
 またWEB会議も積極的に行っています。我々発注者と施工及び設計関係者など、場合によっては本省担当者も交えた会議を対面とWEBを併用しながら実施しており、現場の打合せも含めて効率的に行うことができています。建設現場での遠隔臨場については通信事情が悪い場所もありますが、今後も活用して参ります。

  管理施設での耐震化率98・2%に

■今年は年初の地震や夏場の大雨などが発生しましたが、近畿管内における公共施設の防災対策はどのように。

 管内で近畿地整が管理する建築物については、令和7年度までに耐震化率100%を目指しています。令和6年度末までの耐震化率は98・2%を達しています。能登半島地震では、一部住民の方々が避難所に指定されていない合同庁舎に避難されたと伺っています。我々が整備する施設は、行政施設に限らないですが、どのような施設においても、地域の方々の生活に密接な係わりをもち、安全安心を守るなど、重要な役割を果たしていることを改めて認識しました。
 近年激甚化する台風や大雨による浸水被害等もありますが、施設を整備するだけでは対応出来ない部分もあり、施設管理者の運用面での対策も重要になっており、関係省庁等に施設の適切な保全や必要な機能の確保について要請して参ります。災害はいつどこで起きるか分からず、公共建築に求められる品質の確保も含めて、耐震性や必要な機能の確保に引き続き取り組んでいきます。

■今後もご尽力下さい。

 
 
 


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