日刊建設新聞社 CO−PRESS.COM |
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持続可能な建設業を目指して 第3次担い手三法の推進を |
「地域の守り手」役割果たす |
教育や処遇 海外と格差 |
近畿地方整備局企画部 | 橋伸輔部長 |
建設産業専門団体連合会 | 岩田正吾会長 |
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岩田会長 | 橋部長 |
[オブザーバー] | ||
近畿建設躯体工業協同組合 | ||
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担い手の確保と生産性向上、地域における対応力強化を図り、持続可能な建設産業の実現を目指して昨年に施行された「第3次担い手三法」。同法では、技能労働者に対する処遇改善に関してかつてない取組みが示されたものとなっている。こうした中、近畿における建設行政を先導する近畿地方整備局の橋伸輔企画部長と、同法改正に携わってきた建設産業専門団体連合会の岩田正吾会長に、それぞれの立場から取組みにあたっての見通しなどを語ってもらった。 |
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■まずは、第3次担い手三法について国交省の取組みからお話し下さい。 |
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橋 | ||
令和6年6月に改正され、基本コンセプトは持続可能な建設業とし、建設業が将来に渡って地域の守り手としてその役割が果たせる業界とすることが改正のポイントです。その中では、担い手の確保に係る働き方改革や賃金をはじめとする処遇改善等が重要な課題ではないかと考えます。賃金に関しては、公共工事設計労務単を12年連続で引き上げ全職種平均は2万3千6百円と過去最高を更新しています。賃金水準を上昇させていくことで、担い手の確保につながるものとなります。 |
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■担い手三法の改正には岩田会長も建専連の立場で関わってこられましたが、専門工事業としての現況を。 |
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岩田 | ||
改正にあたっては、その視点がどこに向いているか、着地点をどこに置いているかを気にかけていました。特に技能労働者の賃金については、「他産業並みに引き上げる」ということになりました。私的にはそれでも十分ではないと思っていますが、まずは法的な整備が必要であるとしてここまできました。 |
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橋 | ||
建設キャリアアップシステム(CCUS)では、各種の取組みと合わせてレベル別年収も公表されています。これにより工事に従事する技能者が技能と経験に応じた処遇を受けられ、若い世代に対しては自らのキャリアパスを見通すことができるようになり、若年世代の入職促進につながるものでは思っています。 |
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岩田 | ||
ただ、民間工事では未だに関係のない話になっています。CCUSについても必要性すら理解されておらず、地場ゼネコンにその傾向が強いところがある。CCUSの登録者に関しては、一定程度はスーパーゼネコンが主導してきた面もありますが、担い手三法によりお金が行き渡る仕組みが構築されれば、さらに進むと考えます。 |
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求められる「建設業ならでは」の働き方改革 | ||
■処遇改善についての取組みはどのように。 |
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橋 | ||
ダンピング対策として、受注者が発注者に提出する請負代金内訳には、法定福利費を明示することとしています。見積書の法定福利費内訳明示に関しては、調査によると2次・3次下請が提出した割合は前年度よりは微増していますが、下にいくほど提出する割合は減少していきます。また、法定福利費を明示した見積書を提出した場合で、1次・2次の下請に対し法定福利費全額が支払われたものは微減となっていますが、これは民間工事の動向に左右されている面もあるかと思われます。 |
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岩田 | ||
いろんな意味で先を見通したうえで、今やらないといけないと思っています。世界と互角に戦っていくための目標値を今のうちに設定し、それに対してどう動くかを考える必要があると思います。そのためには海外の状況を感じる必要があります。 |
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■「現場で怒られながら育つ」という時代ではなくなりました。 |
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岩田 | ||
いくらお金を払っても教育を現場のOJT任せでは持ちません。欧米(イギリス・アプレンティスシップ)の場合、その教育機関自体が財源を持っているから可能になります。財源は、全産業の労働者から0・5%徴収し、それに建設業の場合は0・35%加えた0・85%を教育財源に充てています。徴収した財源は基金のように積立てて、賃金とは別にそこから有給休暇分が支払われます。 |
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橋 | ||
海外と日本とのギャップがありすぎて、そこをどう埋めるかですね。 |
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岩田 | ||
ただ、それを日本でやる必要があるかどうかは、それぞれの考え方があり、欧米は物価が高いからそうなっているわけです。しかし、間違いないことは、10年先には技能労働者の25%は退職します。全鉄筋傘下の鉄筋工の28%は外国人で、この状況で25%がいなくなれば技能工の半分は外国人になります。さらに処遇改善が進まなければ、現在の四十代や五十代の技能工が現場で働き続けているかどうか疑問です。 |
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■処遇改善について海外との違いはありますか。 |
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岩田 | ||
欧米では、大学教授より技能者の方が賃金は高いですが、それは社会的地位などではなく、技能者が身体を酷使し、危険な仕事に従事しているからです。日本では新3Kと言われていますが、従前からの3Kは変わりません。ですからどこを見て処遇改善するかで、現状では、とりあえず標準労務費をどこかに着地させてスタートし、建設Gメン・下請Gメンの方々にサポートしていただき、元請が発注者からそのお金を支払ってもらうような方向へ持って行く。そういった気運醸成が必要です。 |
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■処遇改善では、元請と下請の関係性が重要です。 |
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橋 | ||
元請・下請の対等な関係構築と公正で透明な取引の実現を図るため、立入検査等を実施して注意喚起や指導監督等を行うことで法令遵守と契約適正化に向けた取組みを推進しています。また、令和3年度より公共工事と民間工事の元請を対象に、標準見積書の活用状況等をヒアリングするモニタリング調査を開始し、発注者へも労働基準監督署の職員を同行した工期特化モニタリング調査も行っています。さらに今回の第3次担い手三法では建設Gメンにより請負代金や労務費、工期の三点を重点に発注者、元請、下請に対して調査を行って取引の適正化を図っていきます。 |
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岩田 | ||
コロナ禍においては、自粛期間中でも建設労働者はエッセンシャルワーカーと言われ、現場に入っていました。止まっている現場もありましたが、大半は稼働しており、我々も一種の使命感を持って現場に出ていたわけですが、技能工の中には奧さんから、「周りが自粛しているのに何故働いているのか」と言われ辞めっていった人もいます。そのうちの何人かは物流関係のドライバーに転職しましたが、それこそコロナ禍では医療関係者と物流関係者はエッセンシャルワーカーとして社会から認知され、賃金も上昇しました。それに対して建設業は見向きもされなかった。社会が認めないと賃金も上がっていかない。そういった社会的な評価も処遇改善につながればと思います。 |
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■働き方改革の取組みとして労働時間短縮と生産性向上について。 |
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橋 | ||
生産性向上に関し国交省では、アイコンストラクション2・0により2040年までに現場のオートメーション化をできるだけ図っていくことしています。建設従事者の高齢化や労働人口が減少する中で、将来的建設従事者が増えることは難しい状況では、オートメーション化の部分を増やさなければならないと考えています。完全オートメーション化は無理ですが、大手ゼネコンではいろんな形で既に導入されています。ただ、ある程度はオートメーション化しても、どうしても人手に頼らなければならない部分はあり、その部分での賃金を上げていく等のやり方は出来るかもしれません。 |
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岩田 | ||
欧米では地震が殆どなく、建物構造もPC化が容易ですが日本ではそうはいきません。そのためオートメーション化には限界がありますが、そこには設計も大きく関わってきます。オートメーション化をはじめとする効率化や生産性向上には全て設計が関わってくると思いますが、その辺は議論にはなっていません。 |
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■週休2日の取組みも重要です。 |
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橋 | ||
国土交通省では週休2日を進めていくというスタンスで、直轄工事ではほぼ、4週8休は達成している状況です。これをさらに進め、工期全体での取組みから月単位での取組みとし、また、近畿地整独自の取組みでは令和6年度から原則、維持工事等を除き、土日の現場閉所を前提としたほか、予定価格3億円以上の工事は、祝日も現場閉所とする土日閉所指定型を試行実施しています。 |
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岩田 | ||
週休2日に関しては、公共工事で率先して進めていただいております。一方、民間発注者のスタンスとしては、たとえば、現場に対しては土日は休んでも自由だが、「工期は変えない」という考え方もまだまだ根強く、こちらが要望しても、結局はその条件で請ける業者を探してくる。 |
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橋 | ||
公共工事においても完全週休2日は通常の工事に適用しており、災害復旧工事は対象外です。このため、工事従事者が個人レベルで週休2日が確保できるよう週休2日交代制モデル工事として試行しています。ただ、全体的には土日閉所の流れであり、建設業への入職促進は土日閉所をベースに、緊急的な工事等は特例とするやり方が必要ではと思います。また、昨年は元請団体から猛暑対策への要望が多くありました。先程言われたフレックス制やサマータイムの導入を求める意見もありました。 |
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岩田 | ||
週休2日を段階的に進めていくことは必要ですが、何故か特例は認めないとする雰囲気みたいなものはあります。また、新卒を採用している業者は、既にそういった取組みを取り入れており、その条件で入社した人は休めますが、現場を止めるわけにはいきませんから、古くからの従業員がカバーすることになる。そこのギャップをなくしていきたい。 |
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橋 | ||
厳しい状況が続いていますが、我々としてもいろいろと意見やお話を伺いながら、しっかりと対応していきたい。今後も協力をお願いします。 |
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■これからもそれぞれの立場でご尽力下さい。ありがとうございました。 |
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