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泉佐野市 千代松大耕市長  【2025年1月6日掲載】

万博と世界つなぐ玄関都市

泉佐野を「セカンドパビリオン」に

日米姉妹都市サミット、まるかじりJAPAN

多彩なイベント 相乗効果で盛り上げ

 今年4月、いよいよ2025日本国際博覧会(大阪・関西万博)が開幕する。今回の万博には海外から約350万人の来場が見込まれているが、その際、玄関都市となるのが関西国際空港を擁する泉佐野市である。
 泉佐野市では「万博のセカンドパビリオン」を掲げ、「日米姉妹都市サミット」や「まるかじりJAPAN」など様々なイベントを仕掛けることで、相乗効果の最大化を狙う。千代松大耕市長に万博に向けた意気込みや開催期間における同市の取組み、ふるさと納税を活かした独自のまちづくりなどを聞いた。

■あと3ヶ月ほどで大阪・関西万博が開幕します。泉佐野市に立地する関西国際空港が、この大きな国際イベントの「空の玄関口」になります。

 関西エアポートの山谷佳之CEOはずっと「関空は大阪・関西万博のファーストパビリオンになる」とおっしゃっています。泉佐野市はその関空に最も近いまちであることから、「万博のセカンドパビリオン」と海外の方々から呼んでいただけることをめざし、取組みを進めているところです。

■では、具体的な内容を教えてください。

 万博開催期間を通した取組みとして、りんくうタウンに全国物産館「まるかじりJAPAN」を設置し、特産品PR等イベントを実施します。当市では全国45都道府県、50自治体と相互に特産品をPRする「特産品相互取扱協定」を締結しています。「まるかじりJAPAN」では、同協定をはじめ当市がこれまで築いたネットワークを活用し、協定先自治体の特産品やご当地グルメなどを来場者にふるまうこと等により、特産品のPR、地域の魅力を発信していきます。

■MICE誘致も決まった。

 万博期間中の一番の目玉イベントとなるのが、9月に開催する「日米姉妹都市サミット」です。日米両国における姉妹都市の首長ら関係者約800人が泉佐野市に来訪される予定です。もちろん、万博会場にもご案内します。そのほか、先進都市に向けて取組みを進めているeスポーツの大会など市域の定期イベントを集約して開くことで、万博との相乗効果を図り、関空対岸のまちとして大いに盛り上げていきたいですね。
 ところで、あまり知られてはいませんが、当市は日本一海外の友好都市を持つまちであり、現在11の都市と提携を結んでいます。昨年7月にはカルフォルニア州デイリーシティ市と姉妹都市協定を締結し、これをきっかけにサミットを誘致することができました。

■万博には海外から約350万人の来場が想定されています。関空ゲートシティとしての役割は大きい。

 当市では、かねてよりインバウンドの受入環境の向上を図るため、宿泊施設の整備に取り組んできました。
 一例を挙げると、りんくうタウン駅前の「OMO関西空港」(2023年開業)の立地場所は、市の公共駐輪場をホテル開発用地として売却したものです。今では市域の旅館・ホテル客室数は約4200室あります。人口10万人の都市としてはかなり多い数だといえるでしょう。

   大阪市に次ぐ外国人宿泊者数
    
   日本最古の霊山・犬鳴山

■外国人宿泊者数については、全国の自治体の中でも常に上位にランクされています。

 コロナ禍が収束しつつある中で、外国人宿泊者数は府内では大阪市に次ぐ規模となり、最近では年間70万人を超えてきています。やはり、関空利用時に前泊・後泊するインバウンドの方々のウェイトが極めて高く、滞在時には市内のアウトレットやスーパー、コンビニなどでたくさん買い物をしていただいています。ただ一方で、経済効果をもっと発揮できる場所が市域に必要だと考えています。たとえば、アミューズメント施設の充実やナイトタイムエコノミーの活性化など、地域経済がさらに潤う手法をこれから創り出さないといけません。

■観光資源のテコ入れも大切ですね。

 泉佐野市には「中世日根野荘の風景」「北前船寄港地・船主集落」「葛城修験」の3つの日本遺産がありますが、なんと構成文化財の数は日本一なんです。今後はそれら一つ一つの文化財を丁寧に磨き上げていきます。また、構成文化財の中でも、犬鳴山は京都や奈良の歴史文化遺産ともいい勝負ができるのではないかとみています。

■大阪府内唯一の温泉郷でもあります。

 犬鳴山には修験道の開祖、役行者(えんのぎょうじゃ)によって661年に開山された霊場・七宝瀧寺があります。同じく修験場の根本道場である吉野の大峯山より6年早く開かれ、元山上とも呼ばれ、今でも全国から行者が集まります。ご本尊は倶利伽羅不動明王で、広場にある身代わり不動明王は青銅製としては日本で一番大きく、すごい迫力です。みなさんに見ていただきたいですね。

 
   「#ふるさと納税3・0」活用 りんくうエリア
  
    民間業者による賑わい創出
  
    定住促進 新たな産業生み出す

■りんくう公園エリアにおいては、りんくうアイスパークを中心に活力ある空間づくりを推進されています。

 まずは簡単に経緯を説明しましょう。大阪府営りんくう公園に隣接し、りんくうタウンの空港連絡道路北側に位置するこのエリアはもともと府の公園予定地でしたが、関空開港以来ずっと未整備となっていました。そこで当市が府から借り受け、国際規格のスケート場「関空アイスアリーナ」を核とした賑わいある公園空間づくりに着手し、2020年に「りんくうアイスパーク」として開設しました。公園内には広い芝生広場を設けるとともに、2021年にはイベントスペース「あさひ賃貸りんくうステージ(泉佐野市立りんくう野外文化音楽堂)」がオープンしました。先に述べた「まるかじりJAPAN」の会場はこの芝生広場に設置します。パーク海沿いには関空アイスアリーナはもちろん、ホテルや温浴施設が既に整備されています。

■泉佐野市はふるさと納税のまちとして全国に名を馳せている。その独自ノウハウを活用し、民間事業者の賑わい施設もアイスパークエリアに誘致されました。

 当市では新たな地場産品の創出を目的とし、2020年からふるさと納税型クラウドファンディング「#ふるさと納税3・0」に取り組んでいます。そして、この取組みにおける最大のプロジェクトとなる「ヤッホーブルーイング大阪ブルワリー」が2026年に開業する予定です。大阪ブルワリーはエンターテインメント性を兼ね備えた体感型のクラフトビール製造施設であり、泉佐野市を訪れる国内外のみなさんに楽しんでもらえる新たなレジャースポットと位置付けています。さらに、アイスクリーム工場とハム・ソーセージ工場の進出も決まりました。
 いずれも、ふるさと納税の返礼品にもなる地場産品の製造工場であり、あわせて見学・体験もできる複合型賑わい創出施設となります。飲食関連のスタートアップ企業が横丁のように並ぶチャレンジショップも併設します。

■泉佐野市の発案による、まさにふるさと納税の進化形ですね。

 「#ふるさと納税3・0」はクラウドファンディングにより地場産品を創出し、新たな産業と雇用を生み出し、地域活性化をめざすものです。つまり、ふるさと納税の寄附金のすべてをまちづくりに活かしている。だからこそ、本当に「日本一のふるさと納税のまち泉佐野」なんですよ。
 何より、まちに新たな産業があるからこそ、若い人たちは定住してくれます。今年度の「#ふるさと納税3・0」では、市内にこれまでなかった家電工場やウナギの養殖場といった新たなプロジェクトが続々と始動しました。まちづくりの可能性がどんどん広がっていると手応えを感じています。

   防災拠点「みらい安心センター」建設へ
    
   京奈和関空連絡道路 早期実現

■現在、市庁舎周辺整備工事に取り組まれています。

 市役所周辺地区での行政機能の充実と市民サービスの向上を図るとともに、災害に強い庁舎をめざすため、市役所敷地内の機能の再配置を行い、「市民に親しまれ交流の拠点となる庁舎」を基本理念に新館建設等の施設整備を進めています。
 具体的には、庁舎本館横に地上七階建ての「仮称・みらい安心センター」(完成予定は2027年度末)および立体駐車場を新設するもので、 現在は実施設計の段階です。みらい安心センターについては、基本計画段階では耐震構造を採用していました。しかし、防災拠点としての機能を改めて検討し、柱頭免震構造に変更しました。 加えて、立体駐車場も含めて規模が大きくなったことや建設資材の高騰などもあって、事業費は約109億円を見込んでいます。

■現庁舎は築50年が経過しています。行政に求められるニーズも多様化し、対応が難しくなってきた。

 やはり、スペースの確保が重要課題ですね。代表的な例として、ふるさと納税担当チームの場合、私が市長に就任した2011年度における寄附受入額は600万円ほどで職員1人とパートさん数人で回していました。それが2023年度には約175億円にのぼり、今や職員7人とパートさん、委託先を含めると約50人体制で運営しています。 
 いずれにせよ、今後ますます多様化する市民ニーズおよび行政需要に対応するうえで現庁舎では手狭になってきた。さらには、 教育をはじめ既存機能の強化や新たなサービスの展開を図っていくためにも新館建設は不可欠だと考えています。

■建設促進期成同盟会の副会長として、京奈和関空連絡道路早期実現に向けても活動されています。

 京奈和関空連絡道路は2022年4月、国土交通大臣から物流のさらなる円滑化を図るため指定する「重要物流道路」の候補路線として定められました。この道路が実現すれば、和歌山県紀北地域、奈良県南部、大阪府南部の物流がよりスムーズになり、関空からのインバウンドも和歌山、奈良の世界遺産に直接向かうことができます。災害時には広域での緊急搬送道路にもなり、国土強靭化においても大きく寄与する道路となります。
 今後も積極的に要望活動などを展開し、早期実現をめざしていきます。

  
  


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