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馬場伸幸 衆議院議員    【2025年03月31日掲載】

南大阪22市町村 新たな連携を推進

「国際観光振興」などテーマに

年間発着回数引き上げ 関空を最大限活用


 大阪観光局によると、昨年の大阪府における訪日外国人数は1464万人(推計)と過去最高を更新した。今年についても、来月13日には大阪・関西万博が開幕するなど、インバウンドによる経済の活性化が大いに期待される。
 そしてこの機を捉え、泉州・南河内の南大阪22市町村では、観光振興などをテーマにした新たな自治体間連携「南大阪創生首長会議」の発足へ向け、力強く動き始めた。南大阪一体となり、関空開港以来の悲願ともいえる「南北格差の解消」をめざす。
 地元、堺市選出で南大阪首長会議のアドバイザーに就任予定の馬場伸幸衆議院議員(日本維新の会)に取組み状況などを聞いた。

■かねてより、大阪の南北地域における格差解消を訴えられています。

 大阪はいわゆる「北高南低」。昔から大和川以南は置きざりにされてきたという思いがある。
 1994年に関西国際空港が完成した当時、「これで南大阪も活性化する」と地元は沸いた。しかし、30年経過した今なお、一向に格差は是正されない。たとえば訪日外国人旅行者の周遊ルートをみても、そのほとんどは関空に到着後、南大阪をスルーして大阪市内や京都へと向かう。単なる通過点になってしまっている。

■大阪府も関空もインバウンドの数は過去最高を更新しています。地域には歴史文化遺産の集積もあるのにもったいない。

 南大阪においては、国際観光振興に向けた自治体ネットワークの構築が不完全だ。もちろん、スポット的な自治体間の連携はあるものの、現状では組織立った動きにはなっていない。いわば、宝の持ち腐れになっているところがある。

■地域が一つにまとまることが大事だと。

 南大阪と一口にいっても、泉州と南河内を合わせて22の市町村があるうえ、人口規模では、政令市の堺市が約80万人で群を抜き、最下位の千早赤坂村はおよそ5千人にすぎない。地域内における自治体の体力差は非常に大きい。だからこそ、お互いがもっと支え合わないといけない。まさに南大阪が一体となり濃密な産官学の連携体制をつくり上げ、国際観光振興に向けた取組みを推進する必要がある。

■2週間後に大阪・関西万博が開幕し、5年後には大阪IRも開業する。好機のように思えます。

 この春から、関空の年間発着回数の上限が23万回から30万回に引き上げられる。これは南大阪にとって最大のチャンスであり、間違いなく成長の起爆剤となり得る。もっとも、関空を最大限に活用するためには、インバウンド客に南大阪で2泊、3泊してもらえる受け皿づくり、すなわち、リゾート開発など様々な大型プロジェクトの誘致が不可欠だ。

■民間投資を南大阪地域に呼び込まないといけない。

 私は国会に送り出していただいて13年目になるが、最初の頃、大阪は投資対象として見向きもされていなかった。だが、大阪市域におけるプロジェクトが次々と具体化・現実化するにつれ、関東系デベロッパーの目が大阪に向き始め、資金も流入してきた。
 そして今後、大阪市内への投資需要が一定の落ち着きを見せれば、次は南大阪を投資先候補に組み入れようかと。そんな雰囲気も肌で感じる。
 開発事業者の立場からすれば、大阪市内に比べ、イニシャルコストをはるかに低く抑えられる。これはすごいインセンティブとなる。むろん、地域内に関空を擁することが最大の魅力だ。
 一方、成田空港の関係者に話を聞くと、成田は29年には発着枠を50万回に拡大する計画で雇用拡大が見込まれる。それに伴い、居住環境を含めたインフラ整備が急務になっているという。関空周辺においても同様に、新たなまちづくりが期待できる。

    紀淡海峡ルートも視野
   地域主権のモデル、首長会議で意思決定

■取り巻く状況は着実に好転していますね。

 さらに国レベルで考えると、南大阪地域にインバウンドの受け皿が充実してくれば、いよいよ和歌山市と洲本市(淡路島)を結ぶ「紀淡海峡ルート」の実現も視野に入ってくる。そうなると、将来的には南大阪や和歌山で数日間過ごした後に淡路島、四国へと向かう。言い換えれば、南近畿と四国を結ぶ新たな観光ルート、人の流れが生まれる。民間投資を呼び込むためには、このような長期的・広域的な視点から南大阪の成長ストーリーを描くことも求められる。
 ところで、昨年に開催された日経新聞さんのシンポジウムで菅義偉元首相が講演された際に「南大阪は最後のフロンティアだ。できることは何でも協力させてもらう」とおっしゃっていた。この言葉は大阪の財界人たちを非常に勇気づけたと思う。

■話を戻しますが、南大阪における新たな自治体間連携のポイントを教えてください。

 大阪府では今年9月から宿泊税を引き上げる。当然、税収増が見込まれるので南大阪地域にも還元してもらう。その財源をもとに、22市町村で構成する南大阪首長連合としてエリア全体の観光振興を強力に推進していく考えだ。新たに「南大阪創生首長会議」の設立も決まり、今月15日には準備会を開催した。私はこの会議のアドバイザーに就任する予定だ。これまでの国頼みを脱却し、地域の首長が集まり議論し、体系立てて観光インフラ整備のための予算配分などを意思決定する。ひいては宿泊客の増加、宿泊税の増収という好循環を生み出す。地域主権の一つのモデルでもある。
 今の首長さんたちは既存の枠にとらわれない柔軟な発想を持っており、それぞれの自治体で熱心に観光振興に取り組んできた。しかし、最終的には財源がネックとなることに加え、行政の壁を越えた連携も十分ではなかった。つまり、ポイントは財源と連携の二つ。今回、新たな仕組みが整えば、首長さん一人ひとりの能力やアイデアを存分に発揮することができると信じている。

■関空開港以来、「滞在してもらえるまち」に向けた議論を繰り返してきました。やっと一歩前に踏み出せる。

 繰り返しになるが、菅元首相が指摘されたように、南大阪のポテンシャルは上がってきている。ここがラストチャンスと覚悟を決め、波に乗らないといけない。関空開港の原点に立ち返り、私は政治家として南大阪、堺の発展に力を尽くし、地元のみなさんに恩返しがしたい。

       ○

【南大阪22市町村】

 泉州/堺市、高石市、泉大津市、忠岡町、和泉市、岸和田市、貝塚市、熊取町、田尻町、泉佐野市、泉南市、阪南市、岬町
 南河内/富田林市、河内長野市、松原市、羽曳野市、藤井寺市、大阪狭山市、太子町、河南町、千早赤阪村

 
 
 


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