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| 物流交易、観光振興、減災・防災を支える港湾 阪神港の機能強化を推進 湾岸道西伸部 海上橋基礎工事へ着々 災害対応、働き方改革、脱炭素の取組みも |
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物流交易の拠点として大きな役割を果たしている港湾。近年ではクルーズ船の寄港による観光振興にも大きく寄与し、また災害時には緊急物資の輸送ルートとしても期待されている。こうした中、日本海や瀬戸内海、太平洋と異なった気象・海象を有する近畿圏での港湾行政を統括する近畿地方整備局の小林知宏副局長は、それぞれの特性に応じた港湾機能の強化・拡充に努めている。その小林副局長に、同局が進める施策の取組状況等について聞いた。 |
■まず、今年度事業について。 |
今年度事業のうち、国際コンテナ戦略港湾の阪神港に関しては、昨年2月に「新しい国際コンテナ戦略港湾政策の進め方検討委員会」が、令和6年度から概ね5年間のうちに取り組むべき施策の方向性についての最終報告を行っており、基本施策の三本柱である集貨・創貨・国際競争力強化に取り組んでいきます。 |
■大阪湾岸道路西伸部事業は。 |
これも阪神港の機能強化にとって重要な事業になりますが、今年度は海上の長大橋の主塔基礎部分で杭の載荷試験を実施しています。主塔を支える地盤の支持力の確認を4箇所で行っており、載荷試験は1月末で終了して、現在は試験で得られたデータの解析等を行っています。解析結果を踏まえ、主塔が設置される予定の地点では航路の切り替えも終了しているので、来年度以降、すみやかに主塔基礎の工事に着工していきたいと考えています。 |
■来年度事業も、それら事業を継続していくことになると思いますが、港湾整備も継続事業が中心になる。 |
神戸港では、コンテナターミナルの一体的な利用を促進するため、ポートアイランドのPC―15〜17において、荷捌地の拡張整備を継続して実施します。大阪港では、夢洲コンテナターミナルの荷捌地の耐震改良を行うとともに、水深16メートルの航路浚渫も進めていきます。日本海側では、舞鶴港で進めている水深12メートル岸壁のケーソン据付工事や西舞鶴道路につながる臨港道路の整備も継続実施していきます。また、柴山港の防波堤工事も引き続き行っていきます。 |
■防災・減災対策と老朽化対策への取組みは。 |
昨年は、運用開始以降初めて南海トラフ地震臨時情報が発出されましたが、南海トラフ地震への対応を進めていく必要があります。このため和歌山下津港では直轄海岸事業として津波対策を実施しています。平成30年度には湾外側の沖側防護ラインの防波堤や護岸などの整備が概成しており、現在は、湾奥部の市街地に面するエリアにおいて、護岸の嵩上げや水門の整備を行っています。また、先程も触れましたが、神戸港と大阪港のコンテナターミナルの荷捌地における耐震改良工事も大規模地震の発生後に物流機能を維持するために実施しているものです。 |
■大阪湾BCPについて。 |
昨年の能登半島地震の教訓を踏まえて、今年度は大阪湾BCPの実効性を高めていくための検討を進めてきました。その一つとして、孤立した地域への海上輸送による支援の在り方を検討しています。津波発生後に緊急物資などを輸送する船舶の安全を確保する航路啓開に関して、海中の沈下物等を撤去する作業船をどうやって確保するかなどをBCPに反映するための検討を進めているところです。岸壁に被害が無くても航路の安全性が確保されなければ接岸することはできません。 |
■今年は阪神淡路大震災から30年ですが、その後の東日本大震災を経て国として港湾政策のあり方に影響はありましたか。 |
阪神淡路大震災は大規模な地震動による施設被害が中心でしたが、東日本大震災では地震動による被害に加えて想定を超える津波による被害が発生しました。南海トラフ地震が発生した場合、地域によっては津波高さが20メートルや30メートルを超えると想定されており、施設整備のみで被害を完全に防ぐことはできません。このため、東日本大震災の教訓を踏まえ、施設整備によるハード対策に加え、逃げる、避難するというソフト対策を組み合わせた減災の考え方が導入されました。津波対策のための施設整備によって、地域住民が避難するための時間を確保し、人命を守るという考え方です。 |
■働き方改革に関する取組みでは。 |
生産性の向上として昨年度から、原則全ての工事でBIM/CIMを適用することとしています。本来は設計から施工、維持管理まで一連のサイクルで取り組むことで効果が発揮されますが、現状では施工計画や関係者協議等に適用している状況で、今後、実現に向け実績を積み上げていくことが必要と考えています。 |
■カーボンニュートラルの取組みでは。 |
港湾における脱炭素化については、昨年、姫路港と東播磨港を合わせた「播磨臨海地域」、大阪港、堺泉北港と阪南港を合わせた「大阪みなと」の2カ所において、法定計画である港湾脱炭素化推進計画がそれぞれ策定されています。今後、立地企業や港湾管理者等において、同計画に基づいた各種の取組みがスタートすることになります。近畿地方整備局としてもそれらの取り組みをサポートするため、脱炭素に係る最新の技術情報の提供や、水素を動力とする荷役機械の実証実験などを通じて支援していきます。 |
■建設業界に対して意見や要望がございましたら。 |
建設業界は、近畿地方整備局が実施する港湾の整備はもとより、災害時の被災地支援など、地域の皆さんにとっても地域の守り手としてとても重要な存在だと思います。このため業界各社が健全に活動できる環境整備を進めていくことも私どもの重要な役割だと思っています。今後も業界の皆さんから要望や意見を伺いながら、環境整備に努めていきます。 |
■ありがとうございました。 |
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