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土木学会 尾花英次郎関西支部長  【2025年11月17日掲載】

土木が支える持続可能な社会の形成

技術力向上と人材育成、温故知新、広がる土木の輪


 土木分野での技術や学術的研究の専門家集団である土木学会。その会員は、産官学で構成されることから幅広い領域での活動が行われている。万博イヤーの今期、土木学会関西支部長に就任した尾花英次郎支部長(大阪都市計画局長)は、万博を契機とした取組みとともに支部活動において3つの課題を挙げる。その尾花支部長に現在の活動や今後の取組みを聞いた。

   万博を契機に新技術の実装化を

■万博イヤーでの支部長就任ですが、意識することはありましたか。

 非常にスペシャルな年に歴史と伝統ある関西支部長への就任は身の引き締まる思いがありました。支部には約6000名の会員がおり、就任当初から緊張感を持って努めてきました。万博に関しては、テーマがいのち輝く未来社会のデザインということで、関西支部としても、未来社会の設計や創造に向けてどのように力を結集していくべきかを考えました。
 具体的には、万博を契機に進展したAIやロボット、デジタルなど、今後実装化されていく新技術をインフラや防災減災、まちづくりの分野にしっかりと取り入れていくことが、万博というシンボリックな年に課せられた使命だと思っています。
 今後、少子高齢化により社会全体が担い手不足を迎える中、そういった自動化技術により省力化できるところは自動化する。既に土木工事では無人化施工やドローンによる測量等が進んでおり、それらをしっかりと後押ししたいと思います。
 また、私自身は都市計画行政に携わっていますが、まちづくりおいては官民にわたる「共創」の必要性を感じています。昨年、まちびらきを迎えた「うめきた2期(グラングリーン大阪)」は、大阪府と大阪市、UR等が都市公園等の基盤整備を行い、オフィスや商業施設のまちづくりは開発JVが整備するという共創を具現化したものです。
 この中では、民間事業者で構成される団体が公園の活用と維持管理を行っています。通常、公園の管理は指定管理者に委託料を支払って委託しますが、ここでは民間事業者が公園で実施するイベント等の収益で維持管理を行う形でエリアマネジメントを実践しています。土木学会も産官学のメンバーで活動していることから、「共創」に重きを置きながら、未来社会のデザインに取り組みたいと思います。
 土木学会本部の池内幸司会長は全国に向けて、「我が国は課題解決先進国である」とのメッセージを発信されました。少子高齢化をはじめ、自然災害等の課題に対していかにして取組み、解決していくかを世界に先駆けて取り組むことで、持続可能な社会像を示すとしたもので、関西支部としてもこのメッセージを踏まえ、幅広い関係者の皆様と連携を図りながら、課題解決先進国として持続可能な社会をどのように示していけるかを考えていきたいと思っています。

   課題解決先進国としての姿を示す

■その中で支部としての活動や取組みは。

 3つの課題に取り組んでいきます。1つ目は「技術力の向上と人材育成」で、技術力を備えた人材を育ていくこと、2つ目は「温故知新」として先人に学ぶことです。今に残る土木遺産は、先人達が各時代の最高の技術や知恵を結集したもので、関西に残る多くの土木遺産に学び、次世代に伝えていきたい。3つ目は、「広がる土木の輪」とし、いろんな分野の方々とネットワークを形成することです。
 「技術力向上と人材育成」では、コンクリート構造物の設計から施工、維持管理の基本に係る研修会を実施しています。各工程毎に、詳細な技術基準が求められており、全てを学ぶには大変な労力が必要となることから、その入り口である基本をきっちりと学ぶことを目的としています。勿論、それぞれの専門的な講習会やセミナーも開催しています。
 また、若手技術者の育成を図るため「しびるアカデミー」を開催しています。70名程度のメンバーが、2年間で各テーマの研究を行うものです。このほか、関西において優れた事績を顕彰する技術賞、技術士の資格取得に向けた受検対策講習会も開催しています。
 「温故知新」では、本部で実施している選奨土木遺産に推薦する関西の土木遺産の調査と推薦を当支部が行っています。その中で1874年に大阪・神戸間で開業した鉄道の橋梁で、イギリスから輸入した錬鉄製のトラス橋があり、撤去後にその部材の一部が道路橋として大阪の浜中津橋に使われていたことから、土木遺産として認定していました。しかし、残りの部材の行方はわからず、長らく調査を進めていましたが、今年の調査で、熊取町の国道に架かっていた橋の部材がその一片だと証明することができ、選奨土木遺産の推薦手続きを行うことができました。
 また、「広がる土木の輪」は、小学生と中学生を対象とした出前授業はじめ、全国高校生クイズ選手権において、コンストラクション甲子園として建設業に関するクイズを実施するとともに、小中学生向けの高速道路の橋梁現場見学会を開催しています。このほか今年から関西支部のネットワーク強化の一環として、通信やIT等のデジタル関連企業を会員として受け入れるため呼びかけを行っています。
 さらに行政機関に対しても、支部管内で土木系職員のいない自治体と連携して、課題や問題解決に貢献できるような活動を進めており、今年8月には京田辺市とその周辺自治体と技術研修を開催しました。小さな自治体の課題は、府県は違っても同様のものも多く、それをネットワークで結ぶことが解決の方途になるのでは考えています。

■なるほど。

   ネットワーク強化へIT企業と連携

 今後については、関西支部として未来に向けてどう活動するかが課題になります。方針としては池内会長が示された「課題解決先進国」というご指摘を踏まえ、支部として関西にちなんだ持続可能な社会を形成していけるかを意識していきたいと思っています。
 土木は、社会の基盤として、様々な都市活動や地域の暮らしを支えています。これらの役割や責任を果たしつつ、AI等の先進技術を土木の領域にも取り入れていきたい。このような取組こそが万博イヤーにスタートした今期のミッションであり、万博レガシーの継承と発展につながるものと考えています。
 さらにインフラの担い手育成のためにも、土木の魅力をアピールし、まずは土木を知ってもらい興味を持ってもらう。そういった機会を増やしながら、若手をはじめ多くの方々が土木の魅力を感じるような環境を作っていくことが極めて重要と考えています。

■ありがとうございました。

 
 


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